元恋人と、今日から同僚です

第6話 仕事は選べない

 朝倉の告白を断ってから、一週間が経った。

 あれ以来、朝倉は必要以上に話しかけてこなくなった。業務連絡は最低限。雑談はゼロ。教育係としての私の指導にも、淡々と頷くだけ。
 望んでいた距離感のはずだった。
 なのに、どこか物足りないような、寂しいような——いや、そんなはずはない。これでいいんだ。

 月曜日の朝。
 編集部に出社すると、藤堂さんが私を呼んだ。

「結城さん、ちょっといい?」
「はい。何でしょう」

 藤堂さんのデスクに近づくと、企画書が広げられていた。
 見覚えのある資料。先日の会議で通った、スキンケア特集の企画書だ。

「この特集、結城さんにメインで担当してもらいたいんだけど」
「はい、もちろんです」

 当然だ。もともと私が出した企画だし、美容ページは私の担当領域。

「それで、サブ担当をつけようと思っててね」

 藤堂さんが、編集部の方をちらりと見た。
 嫌な予感がする。

「朝倉くん、どうかな」

 予感は的中した。

「……朝倉さん、ですか」
「うん。この企画、もともと朝倉くんの意見で方向転換したでしょ?
 彼の視点を活かしたいし、編集実務を覚えてもらういい機会だと思って」

 理屈はわかる。
 朝倉の提案で企画が良くなったのは事実だし、新人に実践経験を積ませるのも教育の一環だ。
 でも——

「あの、他の案件じゃダメですか」
「他の案件? どうして?」

 藤堂さんが不思議そうな顔をする。理由なんて、言えるわけがない。
 元彼と二人で仕事をしたくないなんて、口が裂けても言えない。

「……いえ、大丈夫です。わかりました」

 断る理由がなかった。
 仕事は、選べない。
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