元恋人と、今日から同僚です

第7話 知らなかった顔

 火曜日。

 撮影日まで、あと三日。

 準備は順調に進んでいた。スタジオの予約、モデルの手配。
 小道具の確保まで、すべてスケジュール通り。
 大きなトラブルもなく、むしろ予定より少し早いくらいのペースだった。

 「朝倉、移動の段取りなんだけど」
 「はい。手配してありますんで」

 正直、彼の仕事ぶりには驚いていた。

 編集未経験のはずなのに、飲み込みが早い。
 わからないことがあれば、自分で調べてから質問してくる。

 「結城さん、モデルの衣装なんですけど」
 「うん」
 「先月、藤堂さんの企画で紹介してたものでいいですかね?」
 「良いと思う。それでいこう」
 
 その調べ方も的確で、ネットで拾った浅い情報ではない。
 業界の基本書や先輩の過去記事を参照していた。

 外部スタッフとのやり取りも、声のトーンまで相手に合わせている。
 メーカーの担当者には丁寧に、スタジオのスタッフには的確に。
 相手によって対応を変えられるのは、営業企画で鍛えられたからだろう。

 「あ、朝倉さん!照明なんですけど、これどうです?」

 新人の照明スタッフ。これが二度目の現場らしい。

 「いいねー。新人なのに、そこ、気付いちゃうんだ」

 朝倉の存在が現場の雰囲気すら明るくしている。
 スタッフやモデル、メーカー担当。全体をよく見ているのがわかる。
 そういう細かい気配りができる人だったのかと、今さらながら感心していた。
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