元恋人と、今日から同僚です

第8話 嘘は、すぐにバレる

 撮影当日。

 朝八時——

 スタジオに機材と小道具を搬入する。朝倉と二人で段ボールを運び込んだ。

「これで最後ですね」
「うん。あとはセッティング」

 スタジオのスタッフと一緒に、照明の位置を調整する。
 背景の布を張り、小道具を並べる。
 朝倉が率先して動いてくれるおかげで、作業は順調そのものだった。

 九時半——

 モデルとヘアメイクが到着。
 控え室に案内し、撮影の流れを説明する。

「今日はよろしくお願いします」
「こちらこそ。素敵な特集にしましょうね」

 モデルの笑顔に、少し緊張がほぐれた。
 人気のインフルエンサーで、フォロワー数は五十万人以上。彼女が参加してくれるだけで、特集の注目度が上がる。

 十時——

 撮影開始。
 カメラマンがシャッターを切り始める。
 モデルがポーズを変えるたびに、スタジオに緊張感が走る。

 連続で鳴るシャッター音、照明が常に微調整され、ヘアメイクがモデルの髪を直す。
 撮影現場特有の、張り詰めた空気。この雰囲気が好きなのだ。

 私は全体を見渡しながら、指示を出す。

 「右から光。少し落として」
 「小さめのバッグをモデルさんに」
 「ちょっと顎引こうか。そうそう。いいねー」

 カメラマン、照明スタッフ、ヘアメイク、モデル。
 一つの指示で、現場全体が連動する。この感覚が、たまらなく心地いい。

 朝倉は私の隣で、メモを取りながら見学していた。
 時折、私の指示を復唱するように頷いている。
 朝倉は集中している時、昔から目つきが鋭くなる。

 その表情を、私は知っている。

「結城さん、次のカット、小道具入れ替えますか」
「うん。さっき用意した二番のセットに」
「わかりました」

 朝倉がてきぱきと動く。
 小道具を入れ替え、位置を微調整し、カメラマンに確認を取る。
 初めての撮影とは思えないスムーズさだった。
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