元恋人と、今日から同僚です

第9話 あの日の言葉

 数日が経った。

 写真のセレクトが終わり、レイアウト作業に入っている。
 デザイナーと何度も打ち合わせながら、細かい修正の繰り返し。
 地味だけど、大事な工程だ。

 朝倉は相変わらず、真面目に仕事をこなしていた。
 私が指示を出せば、的確に動く。
 わからないことがあれば、すぐに質問してくる。
 
 一緒に仕事をすることに、少しずつ慣れてきた。
 最初の頃のような緊張感は薄れ、今では連帯感もでてきている。

 それが、いいことなのかどうか。
 自分でも、わからなかった。





 撮影から約一週間。木曜日の昼休み。

 宮本に誘われて、近くのカフェでランチを取っていた。

「真帆さん、最近どうですか?」
「どうって?」
「朝倉さんとのこと」

 また、その話か。
 宮本は、あの日以来、定期的に私の様子を探ってくる。
 心配してくれているのはわかるけど、正直、しんどい。

「普通だよ。企画も順調に進んでるし」
「そうじゃなくて」
「仕事以外に何もないでしょ」

 宮本が、じっと私を見る。

「本当ですか?」
「本当」
「……真帆さん、嘘つくの、本当に下手ですね」

 返す言葉がなかった。

「別に嘘じゃないよ。仕事以外の話は、してないし」
「話してないだけで、考えてはいるんでしょ」

 はい。その通り。図星です。
 この子は本当に痛いところを突いてくる。

 考えている。毎日、考えている。
 朝倉のこと。五年前のこと。自分の気持ち。
 考えすぎて、ここ最近、眠りが浅い。

「ちょっと、だけどね」
「ちょっと?」
「かなり……」

 正直に言うと、宮本が苦笑した。

「で、何を考えてるんですか」
「別れた時のこと」

 自分でも意外なくらい、すんなり口に出た。
 宮本が、少し驚いた顔をする。

「五年前のことを思い出してる。どうして別れたのか」
「……何かわかりました?」
「わからない。でも、昔とは、朝倉の見え方が、違う……?」

 何かが違う。
 うまく説明できないけど、そんな感覚があった。

 その何かがずっと胸の奥に引っかかっていた。
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