元恋人と、今日から同僚です

第12話 距離を置きたい

 打ち上げの翌日。
 私は、朝から頭がぼんやりしていた。

 二日酔いではない。そこまでは飲んでいない。
 ただ、昨夜のことが頭から離れなくて、よく眠れなかった。

 「今度は、逃げない」
 「俺は待ってるから」

 朝倉の言葉が、何度もリピートする。
 嬉しいはずなのに、怖い。
 受け止めきれない、という感覚。

 出社して、席に着く。
 朝倉は、もう来ていた。目が合って、軽く会釈される。

「おはようございます」
「……おはよう」

 普通に挨拶を交わす。
 昨夜のことは、なかったことになっている。
 わけではないだろうけど、朝倉は何も言ってこない。

 待つと言った通り、急かさないつもりなんだろう。




 午前中、特集の校正刷りが届いた。
 印刷所から上がってきた試し刷り。
 最終チェックのために、目を通す必要がある。

「結城さん、校正刷り、見ますか」
「うん、持ってきて」

 朝倉が、校正刷りを私のデスクに持ってきた。
 距離が近い。
 いつもと同じ距離なのに、やけに意識してしまう。

「……ありがとう」
「チェック、一緒にやりましょうか?」
「いい。一人でやる」

 断ると、朝倉が少し驚いた顔をした。
 いつもなら、一緒に確認している。
 それを断るのは、不自然だ。

「……わかりました」

 朝倉が、自分の席に戻る。
 その背中を見ながら、自己嫌悪に陥った。

 なんで、こんな態度を取ってしまうんだろう。
 朝倉は何も悪くない。
 それなのに、私は距離を取ろうとしている。
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