元恋人と、今日から同僚です

第13話 あの夜の真実

 距離を置くと言ってから、一週間が経った。

 朝倉は、約束を守ってくれている。
 仕事の話はするけど、それ以外は何も言ってこない。
 必要最低限のコミュニケーション。私が望んだ通りの関係。

 なのに、楽にならない。

 むしろ、苦しい。

 朝倉の姿が視界に入るたびに落ち着かない。話しかけられないことが寂しい。
 距離を置きたいと言ったのは私なのに。



 金曜日の夕方。
 特集の発売日が近づいていて、編集部は慌ただしかった。
 私は、校了後の事務作業に追われていた。

「結城さん」

 藤堂さんに呼ばれて、デスクに向かう。

「この特集、反響がいいみたい。SNSでも話題になってるよ」
「本当ですか」
「うん。読者参加型の企画が当たったみたいだね。朝倉くんのアイデア、よかったよ」

 朝倉のアイデア。それが、成功の要因になっている。

「朝倉さんに伝えておきます」
「うん、よろしく」

 席に戻り、朝倉の方を見る。
 彼は、パソコンに向かって黙々と作業している。

 伝えなきゃ。
 でも、話しかけるのが怖い。

 一週間、まともに話していない。
 仕事上、最低限のやり取りだけ。それ以外は、目も合わせていない。
 話しかけるのも、なんとなく気まずい。

 結局、私はメールで伝えることにした。

 『特集、好評みたいです。SNS企画のおかげです。ありがとう』

 送信ボタンを押して、画面を見つめる。
 すぐに、既読がついた。

 返信が来る。

 『ありがとうございます。結城さんのおかげです』

 短い文章。業務連絡。そっけない返事。

 私が望んだ通りの距離感。なのに、胸が痛い。
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