たい焼きの頭としっぽ〜歳の離れた弟を育てていたら、幼なじみの御曹司俳優までお世話することになりました〜
敵は身内にあり
京都ロケを二週間後に控えた、ある日のことだ。
「プルルル、プルルル」
小濱家は、どの部屋ももう真っ暗。
でも、こんな夜更けに鳴るはずのない着信音が、頭上から繰り返し聞こえてくる。
「んっ?誰?」
その音に起こされた私は、目を開かずとも、そこに広がる景色を理解した。
隣で眠る湊を、絶対に起こしてはいけない。
ただ、それだけを考えて、枕元に置かれたスマホをちゃんと見ずに、操作する。
「……もしもし。柳生だ」
私の目は、ぱっちりと開いた。
柳生拓真の声だった。
慌てて、両手でスマホを持ち、正座までつくって、しっかりとその名前を確認する。
本当に、柳生拓真が電話してきたらしい。
(はっ!?なんで??)
すると、隣の湊までも、モゾモゾと動き出した。
「んー、ねえさん、話さないの?」
「えっ、あーー……」
湊とスマホを交互に見たあと、私はこう掛け合っていた。
「湊、話してくれない?」
「……いいよー」
まだ眠たいのか、小さな手で、左右の寝ぼけ目を、しきりに擦っている。
だから、せめても償いで、スマホを、耳へと近づけてみせた。
「……んー。もしもし?父ちゃん?……うん、寝てた……僕?元気だよ……父ちゃんは?」
拓真の声を聞くと、湊の目も、徐々に開いてくる。
そして、ちゃんと自分の手でスマホを持ち、これまでと変わりなく、電話の相手と、お喋りを始めた。
(なんだ……湊と話したかっただけか……)
じゃあ、私がいる必要もない。
和紙照明の紐を引いて、明るくする。
そして、しばらく、寝室から離れていた。
また、襖を開ける。
ちょうど、二人が、私のことを、話していた。
「ん?ねえさん」
湊は、こっちを見る。
私はもちろん、手を、頭を、ぶんぶん左右に振りながら、口の動きだけで、「いい!いい!いい!いい!」と訴えた。
すると、湊は、うなづいて、また、会話に戻っていった。
「ねえさんは、いいんだって」
それから、もう、私の名前が出てくることはなくなった。
私は、ふーっ、と安堵の息を吐き、また、湊の隣に戻る。
かと言って、やることもない。
だから、膝を抱えながら、ずーっと、自分の足ばかり見つめている。
「………うん、うん。わかった。またね」
そして、通話は終了した。
「はい、姉さん」
明かりが消えた状態で、スマホが戻ってくる。
でも、今は、何より湊への感謝だ。
私は、その子に、思いっきり飛びついた。
「湊ーー!!ありがとうーー!!」
「え?何が?」
「姉さん、助かったよーー!!」
繰り返し、何が?何が?と、聞かれたけど、私は絶対、言えない。
ただ、心のままに、湊をぎゅーっと、抱きしめながら、ゴロゴロ、ゴロゴロ、転がっていた。
そのうち、湊はまた、ぴたっと、静かになった。
(ん?寝たかな……?)
だから私は、今度こそ、湊を起こさないように、慎重に、慎重に、ライトの紐を下げる。
部屋は、無事、真っ暗になる。
これで、また目を開けたときには、何も変わらない、一日が始まるはず。
だから、私も、目を瞑った。
でも、その「また」は、意外と早かった。
だんだんと、眠りに近づく中、また湊が、モゾモゾと、動き始める。
「あー、そうだ」
「んー、どうしたー?」
「父ちゃんが、店終わったら、きてほしいって」
(え……?)
私は、飛び起きて、ライトの紐を引いた。
私も正座。
湊も正座。
膝を突き合わせて、事の詳細を聞き出す。
思わず、前のめりにもなる。
「ど、どこに?」
「おうち」
間髪入れずに、返事が返ってきた。
だから、私は、整理の時間が、欲しかった。
ちょっと待ってと言わんばかりに、胸に、顔前に、手を置いて、フーッ、と心を落ちつける。
そして、それらを膝の上に戻し、気を確かに、また、話を再開させた。
「……それで?湊は、なんて答えたの?」
その返答も、凄まじく早かった。
「わかったー、って」
私は、一気に、気が遠くなった。
頭を、抱えた。
(ええーー……)
「プルルル、プルルル」
小濱家は、どの部屋ももう真っ暗。
でも、こんな夜更けに鳴るはずのない着信音が、頭上から繰り返し聞こえてくる。
「んっ?誰?」
その音に起こされた私は、目を開かずとも、そこに広がる景色を理解した。
隣で眠る湊を、絶対に起こしてはいけない。
ただ、それだけを考えて、枕元に置かれたスマホをちゃんと見ずに、操作する。
「……もしもし。柳生だ」
私の目は、ぱっちりと開いた。
柳生拓真の声だった。
慌てて、両手でスマホを持ち、正座までつくって、しっかりとその名前を確認する。
本当に、柳生拓真が電話してきたらしい。
(はっ!?なんで??)
すると、隣の湊までも、モゾモゾと動き出した。
「んー、ねえさん、話さないの?」
「えっ、あーー……」
湊とスマホを交互に見たあと、私はこう掛け合っていた。
「湊、話してくれない?」
「……いいよー」
まだ眠たいのか、小さな手で、左右の寝ぼけ目を、しきりに擦っている。
だから、せめても償いで、スマホを、耳へと近づけてみせた。
「……んー。もしもし?父ちゃん?……うん、寝てた……僕?元気だよ……父ちゃんは?」
拓真の声を聞くと、湊の目も、徐々に開いてくる。
そして、ちゃんと自分の手でスマホを持ち、これまでと変わりなく、電話の相手と、お喋りを始めた。
(なんだ……湊と話したかっただけか……)
じゃあ、私がいる必要もない。
和紙照明の紐を引いて、明るくする。
そして、しばらく、寝室から離れていた。
また、襖を開ける。
ちょうど、二人が、私のことを、話していた。
「ん?ねえさん」
湊は、こっちを見る。
私はもちろん、手を、頭を、ぶんぶん左右に振りながら、口の動きだけで、「いい!いい!いい!いい!」と訴えた。
すると、湊は、うなづいて、また、会話に戻っていった。
「ねえさんは、いいんだって」
それから、もう、私の名前が出てくることはなくなった。
私は、ふーっ、と安堵の息を吐き、また、湊の隣に戻る。
かと言って、やることもない。
だから、膝を抱えながら、ずーっと、自分の足ばかり見つめている。
「………うん、うん。わかった。またね」
そして、通話は終了した。
「はい、姉さん」
明かりが消えた状態で、スマホが戻ってくる。
でも、今は、何より湊への感謝だ。
私は、その子に、思いっきり飛びついた。
「湊ーー!!ありがとうーー!!」
「え?何が?」
「姉さん、助かったよーー!!」
繰り返し、何が?何が?と、聞かれたけど、私は絶対、言えない。
ただ、心のままに、湊をぎゅーっと、抱きしめながら、ゴロゴロ、ゴロゴロ、転がっていた。
そのうち、湊はまた、ぴたっと、静かになった。
(ん?寝たかな……?)
だから私は、今度こそ、湊を起こさないように、慎重に、慎重に、ライトの紐を下げる。
部屋は、無事、真っ暗になる。
これで、また目を開けたときには、何も変わらない、一日が始まるはず。
だから、私も、目を瞑った。
でも、その「また」は、意外と早かった。
だんだんと、眠りに近づく中、また湊が、モゾモゾと、動き始める。
「あー、そうだ」
「んー、どうしたー?」
「父ちゃんが、店終わったら、きてほしいって」
(え……?)
私は、飛び起きて、ライトの紐を引いた。
私も正座。
湊も正座。
膝を突き合わせて、事の詳細を聞き出す。
思わず、前のめりにもなる。
「ど、どこに?」
「おうち」
間髪入れずに、返事が返ってきた。
だから、私は、整理の時間が、欲しかった。
ちょっと待ってと言わんばかりに、胸に、顔前に、手を置いて、フーッ、と心を落ちつける。
そして、それらを膝の上に戻し、気を確かに、また、話を再開させた。
「……それで?湊は、なんて答えたの?」
その返答も、凄まじく早かった。
「わかったー、って」
私は、一気に、気が遠くなった。
頭を、抱えた。
(ええーー……)