たい焼きの頭としっぽ〜歳の離れた弟を育てていたら、幼なじみの御曹司俳優までお世話することになりました〜
真っ赤な指先
リビングのドアが開くと、記憶通りの光景が広がっていた。
でも、そこにあるのは、やっぱり私の知らない背中だった。
まず、キッチンへ向かいながら、ソファを指差してくる。
「……そこ、座ってろ。氷、出すから」
「えっ……?」
私は、部屋にも入らず、ソファを見つめたまま、しばらく動けなかった。
だって、そこは拓真が、余計なものをすべて取っ払って、目の前の文字と向き合う。
そんな場所だということを、心得ているから。
でも、また目を動かしたときには、拓真はもう、リビングのどこにもいなかった。
だから私は、もう一度ソファを見て、ごくりと喉を鳴らす。
(拓真が、良いって言ったんだもんね……)
結局、目の前の誘惑に負けて、私はソファに向かって、歩いていく。
そして、端の方に立ち、ちょっとずつ、身体を降ろしていく。
座面に、少しだけ、触れた。
(うわあ。これが……)
すると、そんなタイミングで、拓真がキッチンの方から、戻ってきた。
よく見ると、右手にはタオルと保冷剤。
「あっ、ありがとう」
私は、それを見つけて、すぐ、ソファから立ち上がる。
そして、手を出す。
でも、拓真はその手を受け取らない。
ローテーブルの上に、保冷剤を置く。
ソファの中心に、足を大きく開いて座る。
左右離れた太腿の上で、タオルを広げる。
私はその一連を、ただただ、見下げている。
(やっぱり、おかしい……)
拓真は、ずっと下を向きながら、さぞかし熱心に、手元の作業に集中している。
だから、私は何のためにここにいるのか、まだ分からない。
「お前も、座ったらどうだ?」
「……あっ、うん」
なので、とにかく今は、端の方に座らせてもらう。
隣から、しきりにガサゴソと物の動く音が聞こえてくる。
彼が休まず、動いているってことだけ、私にはわかる。
気づかれないように、そーっと、目を横に向けてみた。
すると、拓真は、氷の乗ったタオルを、器用に折りたたんでいく。
指先は、真っ赤になっていた。
なんだか、拓真と一緒に私まで、おかしくなったみたいだ。
普段なら、とっくに、横取りしているはず。
でも、私は、また身体を向き直し、エプロンの深紅だけを見る。
そして、俯いた陰では、こぼれ落ちそうな笑みを隠すように、唇をギュッと噛み締めている。
なんだか、父さんや母さんの優しさに、思いっきり甘えていた、あの頃に、戻ったみたいだったから。
でも、そこにあるのは、やっぱり私の知らない背中だった。
まず、キッチンへ向かいながら、ソファを指差してくる。
「……そこ、座ってろ。氷、出すから」
「えっ……?」
私は、部屋にも入らず、ソファを見つめたまま、しばらく動けなかった。
だって、そこは拓真が、余計なものをすべて取っ払って、目の前の文字と向き合う。
そんな場所だということを、心得ているから。
でも、また目を動かしたときには、拓真はもう、リビングのどこにもいなかった。
だから私は、もう一度ソファを見て、ごくりと喉を鳴らす。
(拓真が、良いって言ったんだもんね……)
結局、目の前の誘惑に負けて、私はソファに向かって、歩いていく。
そして、端の方に立ち、ちょっとずつ、身体を降ろしていく。
座面に、少しだけ、触れた。
(うわあ。これが……)
すると、そんなタイミングで、拓真がキッチンの方から、戻ってきた。
よく見ると、右手にはタオルと保冷剤。
「あっ、ありがとう」
私は、それを見つけて、すぐ、ソファから立ち上がる。
そして、手を出す。
でも、拓真はその手を受け取らない。
ローテーブルの上に、保冷剤を置く。
ソファの中心に、足を大きく開いて座る。
左右離れた太腿の上で、タオルを広げる。
私はその一連を、ただただ、見下げている。
(やっぱり、おかしい……)
拓真は、ずっと下を向きながら、さぞかし熱心に、手元の作業に集中している。
だから、私は何のためにここにいるのか、まだ分からない。
「お前も、座ったらどうだ?」
「……あっ、うん」
なので、とにかく今は、端の方に座らせてもらう。
隣から、しきりにガサゴソと物の動く音が聞こえてくる。
彼が休まず、動いているってことだけ、私にはわかる。
気づかれないように、そーっと、目を横に向けてみた。
すると、拓真は、氷の乗ったタオルを、器用に折りたたんでいく。
指先は、真っ赤になっていた。
なんだか、拓真と一緒に私まで、おかしくなったみたいだ。
普段なら、とっくに、横取りしているはず。
でも、私は、また身体を向き直し、エプロンの深紅だけを見る。
そして、俯いた陰では、こぼれ落ちそうな笑みを隠すように、唇をギュッと噛み締めている。
なんだか、父さんや母さんの優しさに、思いっきり甘えていた、あの頃に、戻ったみたいだったから。