たい焼きの頭としっぽ〜歳の離れた弟を育てていたら、幼なじみの御曹司俳優までお世話することになりました〜
好きじゃないって★
もう、そんな言葉、一秒足りともつくりたくなかった。

だって、このままじゃ、ずっと心に残り続けたまま、お互いがお互いの日常を、脅かしてしまうじゃないか。

私は、拓真にとってそんな存在にはなりたくないし、拓真をそんな存在にもしたくない。

そんな「一生」は、絶対に避けなきゃいけない。
今すぐ、間違っていると気づいてほしい。

だから、私は、もう目を逸らさない。

「それはさ、好きなんかじゃないよ。柳生さんは、また、何かを失うのが、終わるのが怖いだけ。そんなことしたって、もっとたくさんのものを失うだけだよ……」

拓真は、そんな私を、また、ずーっと感情の分からない顔で、見つめていた。

何も、言わず。
黙り込んだまま。

肩身が狭くなる、静けさだ。

もう、針の音だけじゃない。
ごくりと、唾を飲む。
私の音まで、聞こえてしまう。

結局、拓真は、何も言わないまま。
後ろにボスっと倒れ、また緑を眺め始めた。

肩に腕を回しながら、心底、不機嫌そうに、はぁ……はぁ……と、息を吐いている。
明らかに、イライラしている。

今日もちゃんと、誰の悔いも生まない答えを、出したつもりだったのに。

言ったそばから、自分で呼んだ強い静けさに、妙に責め立てられているような、そんな気分になる。

「な、何?」

もう、限界だった。
自分の手で、静けさを、切り裂いた。

「……ん?いや?そういうこと、言うんだな」

そう言うと、拓真は、やっと身体を起こした。
なぜか、ズボンのベルトに手をかけながら。

今も、ガチャガチャとガサツな音を立てながら、革帯を引き抜いている。

私の気分は、どん底。
慌てふためく力もない。

後ろを向いていよう。
そう冷静に、判断した。

でも、後ろからは、まだ、ガチャガチャとガサツな音が聞こえる。

(もう、疲れた……帰りたい……)

「……ねえ。何やってんの?」

「お前さ、俺じゃない男だったら、いきなり裸になられても、そうやって普通でいられるか……?そもそも、一緒に暮らせたか?」

「いや、だから。それは、柳生さんだから」

ガサツな物音が、ぴたりと止まった。
何か、部屋の空気が、変わった気がした。

「俺だから……何だ?男として見れないか?」

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