愛に目覚めた冷徹孤高の心臓外科医は、政略結婚妻を離さない ――旦那様、この結婚は契約ですよね?
8・5 孤高の心臓外科医の『初夜』
「本当に、お疲れさまでした」
パーティーから帰宅後。俺はダイニングで、万智の用意してくれていた軽食を軽くつまんでいた。
万智は最初、同席せずに部屋に下がろうとした。だが俺が一緒にと告げると、大人しく座ってくれた。
万智はなぜか嬉しそうにしていて、それがなんだか俺も嬉しい。そもそも、彼女が今こうして俺の目の前にいてくれる。そのことに、俺はひどく安堵していた。
あの時は、生きた心地がしなかった。会見終了からのことを、俺は脳裏に思い出す――。
堂々と大峠氏の手術について発表する、院長。その隣で、にこにこと満足げな顔をしている副院長。そんなふたりを見ながら、俺は嫌気が差していた。
嘘で塗り固められた会見なんて、なんの意味もない。だが、これが彼らをどん底に突き落とすための前座だと思ったら滑稽で仕方なかった。
昨夜、軽い火傷を負った万智の手当てをしようと思ったら、逃げられてしまった。万智は俺が迫ったあの日から、俺のことを避けているようだ。
なんとか彼女との間の壁を取り去りたい。そう思ったのに、なんと声をかけていいか戸惑ってしまう。今朝、彼女と交わすことができたのは、出かけの挨拶だけだった。
それでも今日この後、鴎川一家の闇を公衆の面前で暴く。それで万智を安心させてから、もっと万智との距離を縮めるのだと俺は心に決めていた。
俺は大峠氏の手術の後も、秘密裏に鴎川家の横領について調べていた。
改ざんの証拠はあるのに、それを決定づけるものがなかなか掴めない。悪事は見えているのに、手を出せない。
そんなもどかしさを抱えた中だった。普段は人の寄りつかないVIPフロアの奥に位置する院長室の前で、院長と副院長の会話が聞こえてきた。
『まさか大峠氏の手術があんなことになるとは思っていなかったが、翼くんの機転のおかげで素晴らしい舞台が揃った』
パーティーから帰宅後。俺はダイニングで、万智の用意してくれていた軽食を軽くつまんでいた。
万智は最初、同席せずに部屋に下がろうとした。だが俺が一緒にと告げると、大人しく座ってくれた。
万智はなぜか嬉しそうにしていて、それがなんだか俺も嬉しい。そもそも、彼女が今こうして俺の目の前にいてくれる。そのことに、俺はひどく安堵していた。
あの時は、生きた心地がしなかった。会見終了からのことを、俺は脳裏に思い出す――。
堂々と大峠氏の手術について発表する、院長。その隣で、にこにこと満足げな顔をしている副院長。そんなふたりを見ながら、俺は嫌気が差していた。
嘘で塗り固められた会見なんて、なんの意味もない。だが、これが彼らをどん底に突き落とすための前座だと思ったら滑稽で仕方なかった。
昨夜、軽い火傷を負った万智の手当てをしようと思ったら、逃げられてしまった。万智は俺が迫ったあの日から、俺のことを避けているようだ。
なんとか彼女との間の壁を取り去りたい。そう思ったのに、なんと声をかけていいか戸惑ってしまう。今朝、彼女と交わすことができたのは、出かけの挨拶だけだった。
それでも今日この後、鴎川一家の闇を公衆の面前で暴く。それで万智を安心させてから、もっと万智との距離を縮めるのだと俺は心に決めていた。
俺は大峠氏の手術の後も、秘密裏に鴎川家の横領について調べていた。
改ざんの証拠はあるのに、それを決定づけるものがなかなか掴めない。悪事は見えているのに、手を出せない。
そんなもどかしさを抱えた中だった。普段は人の寄りつかないVIPフロアの奥に位置する院長室の前で、院長と副院長の会話が聞こえてきた。
『まさか大峠氏の手術があんなことになるとは思っていなかったが、翼くんの機転のおかげで素晴らしい舞台が揃った』