愛に目覚めた冷徹孤高の心臓外科医は、政略結婚妻を離さない ――旦那様、この結婚は契約ですよね?

3 有明の会という『洗礼』

 季節は梅雨に入り、ぐずついた天気の日が続いている。その中でも珍しく、今日は朝から晴れていた。

 あのパーティーから、二週間ほどが過ぎた。今日、私は鴎川邸にお呼ばれしている。有明会の会合に、初めて出席するのだ。
 今日の会合では、情報交換を兼ねてガーデンパーティーをすると聞いている。私は初参加だから、みなに今回紹介してもらえるということだ。

 鴎川邸は、私の住むレジデンスや光前寺総合病院とは少し離れた場所にある。私は身なりを整えて家を出ると、近くの駅から地下鉄を乗り継ぎ、四十分ほどかけて鴎川邸の最寄り駅までやってきた。
 ここから鴎川邸までは、徒歩十分弱だ。

 沙久良さんにもらったメッセージには、かっちりとしたパーティーではないからカジュアルでよいと書いてあった。だからといって、ジーンズで行くわけにもいかない。
 私は白のボウタイブラウスに、明るいイエローのプリーツスカートをはいてきた。ヒールでガーデンを傷つけてはいけないから、足元は低めのウェッジソールだ。

 手土産に選んだのは、老舗のクッキー缶。あまり高級すぎるものも気分を害してはいけないと思い、あえて外した。

 失礼のないようにしたい。有明会での妻の評判は、瑞樹さんの評判につながるかもしれないから。

 鴎川邸に続く道沿いは、ひとつひとつの区画が大きい。高い建物が建っているわけではないが、区画を取り囲む生垣には背の高い植物が整然と切りそろえられており、不思議と圧迫感がある。もちろん、中の様子を窺い知ることはできない。まるで、一戸一戸が秘密を抱えているみたいだ。

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