悪女ロベリアの矜持 ~欲にまみれた王族の皆様。〝ただの側室〟に翻弄される気分はいかがですか?~
第四章 一夜にして

▽ロエル・ラスセルト

▽ロエル・ラスセルト


 深夜だというのに、扉の隙間からは灯りが漏れていた。
 鍵はかかっていない。
 偶然ではない。オレが行く夜はいつだってこうだ。
 それはロベリアがオレの来訪を心待ちにしてることの証左に他ならない。

 音を立てないようにノブを回し、そっと押す。
 そこに彼女がいる。長椅子にゆったりと身を横たえ、誘うように微笑んで。

 「ずいぶんとお久しぶりですわね、ロエル殿下」

 皮肉ともとれる軽い声。
 待っていたのだと、拗ねているのだと、その声が雄弁に告げている。

 なんて可愛い女なのだろう。
 父上も他の男共も、皆ロベリアを美しいだけのアクセサリーか何かだと思っているが、オレは違う。
 彼女の真の魅力に気づいている。だから彼女はオレが来るたび嬉しそうに笑うのだ。

 「何度も会いにこようとはしたんだが、父上がうるさくてね」

 後宮への出入りがバレたときはさすがに肝が冷えた。
 怒り狂った父に、ロベリアに近づくなと厳命されて一ヶ月。常に監視がつけられ、本宮を抜け出すのも一苦労だった。

 一度だけ、なんとか監視の目を盗んで後宮に忍び込むことに成功したが、以前はいなかった見回りの兵士に見つかりそうになった。
 ちょうど居合わせたヴェロニカという女に匿ってもらったが、あそこで見つかっていたら今日ここに来ることはできなかっただろう。

 なぜこんな面倒なことになってしまったのか見当はついていた。
 きっとエミリオだ。
 あいつが告げ口をしたに決まっている。
 あの臆病で卑怯な弟王子。ロベリアの心がすでにオレにあることに気づいて、無理やりにでも止めたかったに違いない。

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