悪女ロベリアの矜持 ~欲にまみれた王族の皆様。〝ただの側室〟に翻弄される気分はいかがですか?~

▽アイリス・ガーランド

▽アイリス・ガーランド


 強烈な喉の渇きを覚えて目が覚める。
 暑いわけでもないのに、額にはじっとりと汗をかいていた。
 カーテンの隙間からのぞく窓の外は真っ暗で、曇っているのか月明かりさえ差し込まない。

 静かな夜だった。

 同居人を起こさないよう足音を殺してそっと部屋を抜け出す。
 廊下はシンと静まり返っている。皆眠っているのだろう。並んだ扉の隙間からは、ひとつとして明かりは漏れていない。
 
 廊下にはロウソクが灯っているというのに、なんだかこの後宮に一人取り残されたみたいだ。

 「あら……?」

 厨房へ向かう道の途中、談話室のドアが開いていることに気づいて足を止める。
 普段なら大して気にも留めない違和感だ。
 だけどなぜだろう。うなじの産毛がチリチリと逆立つような感覚があった。

 用はないのに、吸い寄せられるように足がそちらへ向く。
 扉の隙間からそっと覗き込んで息を呑む。
 品の良い調度がセンス良く並べられているはずの談話室が、まるで泥棒が入ったように荒れていた。

 何か良くないことが起こっている。
 そんな胸騒ぎがあった。

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