悪女ロベリアの矜持 ~欲にまみれた王族の皆様。〝ただの側室〟に翻弄される気分はいかがですか?~

▽セルヴァン・ラスセルト

▽セルヴァン・ラスセルト


 カタ、と何かが鳴った気がして不意に意識が浮上する。
 薄く目を開けたが明かりはなく、真っ暗で何も見えなかった。
 寝台の天蓋も、壁も。
 だが何かが違う。
 部屋の空気に異物が混ざり込んでいるのを感じてゆっくりと身を起こす。

 「……余に何か用か」

 従者が近衛だろうか。
 眠っていてノックの音に気づかなかったのだとして、許可もなく入ってきたならよほど緊急の用事があったと考えられる。

 「火急の用であればルキウスに言え。余は休息が足りておらぬのだ」

 深夜に眠りを妨げられたことを煩わしく思いながらぞんざいに言い置いて、再びベッドに潜り込む。

 ここのところ増税に対する陳情の多さに煩わされてうんざりしていた。
 ロベリアとの時間が欲しいならエミリオに公務の権限を与えろというルキウスの妥協案は悪くなかったが、引継ぎに時間を割かれるばかりで、結局今日もロベリアに会えていない。

 これ以上余の時間を奪われてたまるものか。
 緊急事態だろうと知ったことではない。そんなものに対処する暇があるなら、ロベリアの元に行きたい。

 どうせまた民衆の反乱がどうとかいうくだらぬ話だ。
 いちいち余の許可を取らずとも、好きなだけ殺して鎮圧すれば解決する。

 「分かったらさっさと出て行け」

 目を閉じて反応を待つ。けれど暗闇からは何の返事もない。
 もしや何者かが立ち入ったというのは余の気のせいだったのだろうか。

 やや寝ぼけた頭でそう考え、再び眠りの世界に入る間際。

 く、と噛み殺すような笑い声が聞こえて、バチリと目が開く。
 それは悪意に満ちたものだった。
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