悪女ロベリアの矜持 ~欲にまみれた王族の皆様。〝ただの側室〟に翻弄される気分はいかがですか?~

▽エミリオ・ラスセルト

▽エミリオ・ラスセルト


 父上も兄上も、顔を合わせるたびにロベリアのことを聞きたがる。
 彼女のそばにいられない間のことを、逐一報告しろなど無茶なことを。

 後宮管理以外にもやることがたくさんあるのだ。
 女官一人に構ってはいられないと言っても、そんな地味なこと放っておけと取り合ってくれない。
 たしかに公務に比べれば地味だが、国を運営する上で軽んじていいことなど、ひとつもないのに。

 彼らはまるで熱に浮かされたみたいにロベリアを褒めそやす。
 父上に至っては、男子禁制のはずの後宮に、どうでもいい用事で廷臣を呼びつけてはロベリアを見せびらかすようになった。

 出入りの記録、見回りの増員、通行証の発行。
 余計な仕事が雪だるま式に増え、うんざりしながら承認印を押す日々だ。

 帰ってきた廷臣たちは決まって「魅惑のスタイル」だの「魔性の微笑み」だのと言って、「どうにかもう一度会わせてくれ」と僕に訴えてくる。
 それを見て父は「いつでもロベリアに会えるのは余だけ」と優越感を味わっている。
 歪んだ独占欲だ。

 僕には彼女の良さが分からない。
 ロベリアと向き合うとき、感じるのは熱ではなく圧だ。
 胸の奥をじわじわえぐるような、言葉にならない圧迫感。

 美しいとは思う。だが同時に、少し怖い。
 彼女を前にすると、何か責められているような、試されているような、そんな焦燥感が積もっていく。
 彼女の目に映る何かの基準に、僕は落第し続けている。そんな感覚があった。

 そんな相手に熱を上げる父上たちが信じられない。
 あの試験官のような眼差しが、皆は恐ろしくないのだろうか。

 最近では「嫌がらせがひどいから他の女官には任せられない」と言って、下級女官代わりに僕に雑事を押し付けるようになった。
 今彼女は後宮中の嫉妬を一身に集めている。納得できなくもない理由だが、それにしたって人使いが荒い。

 とにかくロベリアという女官は、本当に庶民出身なのかと疑いたくなるほどに偉そうだ。
 いや、むしろ王侯貴族の上下関係とは無縁でいたからこその傍若無人さなのかもしれないが。
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