悪女ロベリアの矜持 ~欲にまみれた王族の皆様。〝ただの側室〟に翻弄される気分はいかがですか?~
第三章 砂上の楼閣

▽ロエル・ラスセルト

▽ロエル・ラスセルト


 父上がどうしても外せない公務で王宮を空ける時は、たとえ短時間でもロベリアの元を訪ねるようにしている。
 あまりに入り浸っているせいか、最近はエミリオが口出しするようになってきた。

 何を勘違いしているのか知らないが、ただ王族に生まれついただけの分際で王太子のオレに意見するなど、生意気にもほどがある。
 腹は立ったが、反論して父上に告げ口でもされたら事だ。
 素直に聞き入れるフリで、下級女官を抱き込み、裏口の鍵を開けさせることに成功した。
 エミリオの目を盗んで侵入するのは面倒だったが、ロベリアとの愛を燃え上がらせる障害と思えば許容できなくもない。

 「ロベリア。寂しかったか?」

 返事も待たずドアを開けると、彼女は必ず微笑んでこう言う。

 「またあなた? 王太子って他にやることないの」
 「フン、その憎まれ口も、拗ねているのだと思えば可愛いな」
 「おめでたい人ね」

 ロベリアが嘆息とともに天井を仰ぐ。その仕草も魅力的だ。
 ソファに座ると、ロベリアがすぐに紅茶を淹れてくれた。
 慣れた手つきだ。淑女教育は順調らしい。

 「父上はますますおまえにご執心だ。エミリオもうるさいし、会いに来るのも一苦労さ」
 「エミリオ殿下が? あなたに意見を?」
 「そうなんだよ、びっくりだろ? 後宮の風紀を乱すなとか、女官に手を出すのをやめろとか」
 「へぇ……?」

 ロベリアの反応は薄かったが、その赤い唇には微かな笑みが浮かんでいる。

 「……まさかあいつにまで粉をかけているのか?」
 「あなたにもかけた覚えはないのだけど」

 探るように問うと、ロベリアがツンと顎を逸らせた。
 不機嫌にさせてしまったらしい。

 確かにロベリアほどの女が、あんな小者を狙うメリットはない。
 だいたいあいつが勝手に惚れたところで、なびくような安い女でもないはずだ。
< 75 / 206 >

この作品をシェア

pagetop