悪女ロベリアの矜持 ~欲にまみれた王族の皆様。〝ただの側室〟に翻弄される気分はいかがですか?~

▽セルヴァン・ラスセルト

▽セルヴァン・ラスセルト


 ルキウスをうまく撒けたことに安堵し、軽い足取りで廊下を抜けロベリアの部屋の扉を押し開ける。

 「会いに来たぞ余の小鳥――」

 言い終えるより早く、胸の奥で小さな違和感が警鐘を鳴らした。
 空気がわずかに違う。
 そんな気がして足が止まる。

 「……誰か、来ておったか?」

 責めるように問い、油断なく視線を室内に一巡させる。

 先触れを出したため、茶器は湯気を湛えている。
 ロベリアは長椅子でくつろぎ、花瓶に花を挿していた下級女官は不思議そうな顔で首を傾げていて、誰かが滞在していたという風ではない。

 「教育係や女官は出入りするわ。ここは後宮だもの」

 ロベリアは頬杖のまま、たいして興味もなさそうに笑った。
 涼しい目だ。嘘の気配はない。

 「そ、そうか。いつも通りということだな」

 わざとらしく咳払いをして、用意しておいた箱を差し出した。
 とっておきのタイミングを狙っていたが、疑われたと機嫌を損ねる前に渡してしまおう。

 「ほれ、これをおまえにやろうと思ってな」

 王家の紋章を箔押しした、重厚な革張りの箱。
 蓋を開けば、大粒の宝石がきらりと輝いた。
 もちろん宝物庫に眠る古臭いデザインのものではない。
 最新の流行に合わせて作らせた一級品のネックレスだ。

 「……また?」

 期待に反して、ロベリアが薄く眉を寄せる。

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