悪女ロベリアの矜持 ~欲にまみれた王族の皆様。〝ただの側室〟に翻弄される気分はいかがですか?~

▽エミリオ・ラスセルト

▽エミリオ・ラスセルト


 ヴェロニカたちの事情聴取を終え、最後に事情を聞くためイレーヌの部屋に戻ると、中からアイリスが出てきて息が止まる。

 「っアイリス殿、まさか彼女の手当てを?」
 「ええ。今済んだので、これからヴェロニカさんのところへ行こうかと」
 「ちょうど後宮付の侍医が不在だったから助かるよ。ありがとう」

 思いがけず遭遇したアイリスに、動揺を隠して礼を言う。

 彼女は控えめに微笑み、会釈ひとつを残して中級女官の居住エリアへと向かった。
 その背中をしばし見送り、余韻を味わってから中に入る。うんざりした気持ちが少しマシになった。

 不愉快そうにソファにふんぞり返るイレーヌに、反省の色はまったく見えない。
 アイリスに礼も謝罪もしていないことは明らかだ。

 ロベリアが来るまで嫌がらせの対象にされていたアイリスは、その首謀者であるイレーヌに完璧な応急手当を施したというのに。
 問題を起こしておいて、反省もしないイレーヌが気味の悪い生き物に見えてくる。

 「……それで、なにが騒動の発端だ」

 ルールに従って形式的な質問をする。だけど本当はこんな面倒な人間、問答無用で追い出してしまいたい。

 「……」

 案の定イレーヌは素直に答えることもせず、恨みがましい目で僕を睨みつけるばかりだ。

 ため息が出る。
 後宮は呆れるほどに身勝手な人間ばかりだ。

 いいや、後宮だけではない。この国全体がそうだ。
 一部の特権階級だけが贅沢に暮らし、国民から富を吸い上げている。
 それさえも互いの失脚を願って、揚げ足取りに熱中して。誰も国のことなんて考えていない。

 父も兄も、何の努力もせずただ王族に生まれついたというだけで好き勝手振る舞い、後のことは知らん顔だ。
 なぜアイリスのように他人を思いやれる人間が報われないのだろう。

 「答えぬなら一ヶ月の謹慎を命ずる」
 「わたくしは悪くありませんわ!」

 罰を告げた途端、イレーヌが感情的に叫ぶ。
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