愛のある方へ

素直になれなくて

言葉は、本当なら誰かを抱きしめるためにある。
安心させたり、分かってもらったり、好きだと伝えたりするためにある。
なのに私たちは、ときどき一番大切な人にこそ、ひどいことを言ってしまう。
どうでもいい人には言わないようなことを、どうしてあんなにも簡単に向けてしまうのだろう。

たぶんそれは、嫌いだからじゃない。
むしろその反対で、失うのが怖いからだと思う。
愛されていると確かめたいのに、素直に「不安だよ」と言えなくて、違う形でぶつけてしまう。
本当は「行かないで」と言いたいだけなのに、口から出るのは突き放すような言葉ばかりだったりする。

寂しいと、人は少しだけおかしくなる。
平気なふりをしながら、心の中ではずっと助けを求めている。
でも弱い自分を見せるのが怖くて、先に怒ったり、試すようなことを言ったりしてしまう。
まるで愛し方を知らない怪獣みたいに、吠えることでしか気持ちを守れなくなる。

けれど本当は、傷つけたいわけじゃない。
勝ちたいわけでも、困らせたいわけでもない。
ただ、隣にいてほしいだけだ。
大丈夫だと抱きしめてほしいだけだ。
それだけなのに、素直になれないまま、今日もまた大切な人を遠ざけてしまう。
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