婚約者の浮気が発覚したので、街の中心で「誰か私を貰って!」と叫んだら大物が釣れました
第24話 絶対に認めない
とりあえず、落ち着きを取り戻したリオネルに私の身に起こっていたことを聞いた。
私は深い眠りに落ちていたらしく、ハオランの言う事を真に受けたリオネルが暴走したようだった。
「間違っちゃないんやけどね」
「できれば、キスをしてから目を覚ましてくれた方がロマンチックでしたよね」
「あのねぇ──……!」
文句を言おうとしたが止めた。
やり方はどうあれ、私を正気に戻す為だったってことには変わりない。感謝を伝えるのは当然だが、文句を言うのは筋違い。
「……すみません。護ると言ったのに……」
急にしおらしくなったかと思えば、私に謝罪なんかしてきた。
「まあ、護るなんて大口叩いておいて、私そっちのけで令嬢を囲んでましたからね」
「ッ!あ、あれは──!」
「分かってます。責めてるんじゃありませんよ」
あの時は酒も入っていたし、冷静な判断が欠けていた。リオネルが女性を囲っているのを見るのなんて日常。だから、少しぐらいは私を見て欲しかったのかもしれない……
「オズワルドに付いて行ったのは私の判断です。貴方が気に病むことはありませんよ。それに、ほら。貴方のお陰でこうして自分を保つ事が出来ている」
クルッと一回りし、自分の意志通りに動ける事を感謝する。
「ふっ…本当に貴女は……」
困ったような表情だが、何処か嬉しそうにも見える。
深い眠りの中、聞こえた声……あれがリオネルじゃなかったら、私は気にする事すらなかっただろう。
いつの間にか、このどうしようもない王子様の存在が、私の中で大きくなっていた。
***
目が覚めて数日。父とリオネルが結んだ約束通り、私は自分の屋敷へと戻ってきてきた。
事件の背景は、婚約者を取り戻し、再び婚約を結ぼうと企んだオズワルドの暴走という事でカタが付いた。
だが、オズワルドに手を貸した者は不明のまま。隣国に関係する者が有力だという事で、団長であるテオドラが大臣の周りを調べている所だと聞いた。
オズワルドの父である男爵は、この事件が幸いと、早急に廃嫡の手続きを終えた。
『これで無事、愛するパン屋の娘と一緒になれるわね』と祝福の電報でも送ってやろうと考えていたのに、平民に格落ちしたオズワルドの受け入れをジェシが拒否。
地位も金も、後ろ盾もない男に魅力は感じられなかったらしい。
だが、そんな子供のような理由許されるはずがない。
「婚約者のいる貴族に手を出し、婚約を潰してまで一緒になりかったのでしょう?」
リオネルが少し圧をかければ、ジェシは頷くしかない。今は、何の取り柄もない男と一緒に小さなパン屋の二階に住んでいるらしい。
時折、怒号が聞こえてくるらしいが、仲睦まじく過ごせているようで良かった。
一方の私は、しばらく婚約も恋愛も御免。心身をゆっくり休ませたい。両親も私の気持ちを汲み取ってくれ、療養と言う名目でのんびり過ごしていた。
──はずだった……
「これはどう言うこと?」
「おや、お身体はどうです?」
「誤魔化すんじゃないわよ!」
バンッ!と大きな音を立てて、リオネルの目の前に叩きつけたのは婚約誓約書。ちゃっかり私の名前とリオネルの名前が記入されている。
これが黙っていられるかってんだ!
「いつ私が貴方との婚約を承知しました!?今すぐ取り消してください!」
「おかしなことを言いますね。お互いに自分のものだと容認しているじゃないですか」
「それは……」
冷静に言われ言葉に詰まる。
「それに、この婚約は僕の両親……陛下と王妃殿下の証人の元、作成されたものになります。この決定を覆すのは難しいかと……」
「──んなッ!」
両陛下が証人!?そんなの絶望的状況じゃない!
今思えば、父の様子がおかしかった。どこか苛立った様子で、どうしたのか訊ねても「お前は気にしなくていい」と取りつく暇がなかったが……
(これが原因か)
書類にしている所を見ると、退路を断ち無理やりに納得させた感じなのだろう。やり方が汚い!
(これだから無駄に権力がある奴は!)
リオネルを睨みつけるが、得意げに目を細めながら微笑んでいた。
「私は納得してない!絶対アンタなんかと結婚しない!」
このままリオネルの思い通りになるのは単純に腹が立つ。
「ふふ、駄目ですよ」
不敵な笑みを浮かべながら距離を詰められ、反射的に後退ってしまう。そのまま壁際まで追い詰められ、逃げられないように覆いかぶさり見下ろしてくる。
「僕は君を逃がすつもりはない。もう二度と……」
言っていることは無茶苦茶で、こちらの気持ちを全く無視している。……けど、気持ちとは裏腹に鼓動が速くなり、全身が熱くなっている。
「ん?顔が赤いですよ?どうしました?」
「!!」
クスクスと揶揄うような言葉をかけてくる。絶対分かって言ってるのに、本当に質が悪い。
リオネルことを気にしている自分がいることも確か。それは否定しないが、物事には順序と言うものがある。それに、この婚約は騙し討ちのようなもの。
「……ちゃんとした告白だって貰ってないのに……」
不貞腐れながら呟いたが、あまりにも小さな声だったのでリオネルの耳には届かなかった。
「なんです?」
「な、なんでもない!!」
ハッと我に返り、急に恥しくなり顔を両手で覆った。
「ツェスカ」
脳が痺れるほど柔らかな声色で名を呼ばれ、このままでは心臓が持たないと思った私はリオネルの腕を払いのけた。
「もぉ~~~!!無理!!絶対白紙にしてやる!」
「ええ、出来るものならね」
顔を真っ赤に染めて宣戦布告をする私を、リオネルは余裕の表情で言い返してきた。
私は深い眠りに落ちていたらしく、ハオランの言う事を真に受けたリオネルが暴走したようだった。
「間違っちゃないんやけどね」
「できれば、キスをしてから目を覚ましてくれた方がロマンチックでしたよね」
「あのねぇ──……!」
文句を言おうとしたが止めた。
やり方はどうあれ、私を正気に戻す為だったってことには変わりない。感謝を伝えるのは当然だが、文句を言うのは筋違い。
「……すみません。護ると言ったのに……」
急にしおらしくなったかと思えば、私に謝罪なんかしてきた。
「まあ、護るなんて大口叩いておいて、私そっちのけで令嬢を囲んでましたからね」
「ッ!あ、あれは──!」
「分かってます。責めてるんじゃありませんよ」
あの時は酒も入っていたし、冷静な判断が欠けていた。リオネルが女性を囲っているのを見るのなんて日常。だから、少しぐらいは私を見て欲しかったのかもしれない……
「オズワルドに付いて行ったのは私の判断です。貴方が気に病むことはありませんよ。それに、ほら。貴方のお陰でこうして自分を保つ事が出来ている」
クルッと一回りし、自分の意志通りに動ける事を感謝する。
「ふっ…本当に貴女は……」
困ったような表情だが、何処か嬉しそうにも見える。
深い眠りの中、聞こえた声……あれがリオネルじゃなかったら、私は気にする事すらなかっただろう。
いつの間にか、このどうしようもない王子様の存在が、私の中で大きくなっていた。
***
目が覚めて数日。父とリオネルが結んだ約束通り、私は自分の屋敷へと戻ってきてきた。
事件の背景は、婚約者を取り戻し、再び婚約を結ぼうと企んだオズワルドの暴走という事でカタが付いた。
だが、オズワルドに手を貸した者は不明のまま。隣国に関係する者が有力だという事で、団長であるテオドラが大臣の周りを調べている所だと聞いた。
オズワルドの父である男爵は、この事件が幸いと、早急に廃嫡の手続きを終えた。
『これで無事、愛するパン屋の娘と一緒になれるわね』と祝福の電報でも送ってやろうと考えていたのに、平民に格落ちしたオズワルドの受け入れをジェシが拒否。
地位も金も、後ろ盾もない男に魅力は感じられなかったらしい。
だが、そんな子供のような理由許されるはずがない。
「婚約者のいる貴族に手を出し、婚約を潰してまで一緒になりかったのでしょう?」
リオネルが少し圧をかければ、ジェシは頷くしかない。今は、何の取り柄もない男と一緒に小さなパン屋の二階に住んでいるらしい。
時折、怒号が聞こえてくるらしいが、仲睦まじく過ごせているようで良かった。
一方の私は、しばらく婚約も恋愛も御免。心身をゆっくり休ませたい。両親も私の気持ちを汲み取ってくれ、療養と言う名目でのんびり過ごしていた。
──はずだった……
「これはどう言うこと?」
「おや、お身体はどうです?」
「誤魔化すんじゃないわよ!」
バンッ!と大きな音を立てて、リオネルの目の前に叩きつけたのは婚約誓約書。ちゃっかり私の名前とリオネルの名前が記入されている。
これが黙っていられるかってんだ!
「いつ私が貴方との婚約を承知しました!?今すぐ取り消してください!」
「おかしなことを言いますね。お互いに自分のものだと容認しているじゃないですか」
「それは……」
冷静に言われ言葉に詰まる。
「それに、この婚約は僕の両親……陛下と王妃殿下の証人の元、作成されたものになります。この決定を覆すのは難しいかと……」
「──んなッ!」
両陛下が証人!?そんなの絶望的状況じゃない!
今思えば、父の様子がおかしかった。どこか苛立った様子で、どうしたのか訊ねても「お前は気にしなくていい」と取りつく暇がなかったが……
(これが原因か)
書類にしている所を見ると、退路を断ち無理やりに納得させた感じなのだろう。やり方が汚い!
(これだから無駄に権力がある奴は!)
リオネルを睨みつけるが、得意げに目を細めながら微笑んでいた。
「私は納得してない!絶対アンタなんかと結婚しない!」
このままリオネルの思い通りになるのは単純に腹が立つ。
「ふふ、駄目ですよ」
不敵な笑みを浮かべながら距離を詰められ、反射的に後退ってしまう。そのまま壁際まで追い詰められ、逃げられないように覆いかぶさり見下ろしてくる。
「僕は君を逃がすつもりはない。もう二度と……」
言っていることは無茶苦茶で、こちらの気持ちを全く無視している。……けど、気持ちとは裏腹に鼓動が速くなり、全身が熱くなっている。
「ん?顔が赤いですよ?どうしました?」
「!!」
クスクスと揶揄うような言葉をかけてくる。絶対分かって言ってるのに、本当に質が悪い。
リオネルことを気にしている自分がいることも確か。それは否定しないが、物事には順序と言うものがある。それに、この婚約は騙し討ちのようなもの。
「……ちゃんとした告白だって貰ってないのに……」
不貞腐れながら呟いたが、あまりにも小さな声だったのでリオネルの耳には届かなかった。
「なんです?」
「な、なんでもない!!」
ハッと我に返り、急に恥しくなり顔を両手で覆った。
「ツェスカ」
脳が痺れるほど柔らかな声色で名を呼ばれ、このままでは心臓が持たないと思った私はリオネルの腕を払いのけた。
「もぉ~~~!!無理!!絶対白紙にしてやる!」
「ええ、出来るものならね」
顔を真っ赤に染めて宣戦布告をする私を、リオネルは余裕の表情で言い返してきた。


