傷ついた王子は森の魔女に癒される

19 信じがたい祖国の光景

 森を行く間、互いに無言だった。
 土を踏む音や木々のざわめきが、想いの渦巻く心を騒がせる。

 街へ向かったときと同じだけ歩いた頃、リリアナが立ち止まった。
 以前と同じく手をかざして、森を出る手続きをする。


 前方から木々が消え去り、実際の光景が目に映った瞬間。
 なだらかな丘が広がり、その向こうに見覚えのある山々が見えた。

 毎日のように、城から見えていた自然の景色。
 母が生きていたときも、ひとりきりになってからも、変わらずそこにある光景。


 ああ、ここは。
 確かにボナマハト王国だ――。


「……行きましょう、ファリエルさん」
「……ああ」

 リリアナが、ミルクティー色の髪をなびかせながら歩き出す。
 黒いローブをまとった後ろ姿を追いかけた。



 街道をしばらく歩いたところで、ファリエルは完全に足を止めた。

「あれは……」

 遠くに見えてきた王都の門。
 ほとんど原形を留めていない。
 その向こうに見える城もまた、ところどころが崩壊していた。


 見るも無残な光景に思い知らされる。


 ボナマハト王国は、滅亡したんだ――。


 立ち尽くすファリエルに、リリアナが振り返る。
 眉をひそめてアクアブルーの目を細めた。
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