傷ついた王子は森の魔女に癒される
21 忘れられない人(後編)
ファリエルの目の前で、リリアナは凛と立ち尽くしたまま微動だにしなかった。
魔法の作り出す球が、徐々に小さくなっていく。
魔女は構えていた腕を下ろすと、深くうつむいた。
長い黒髪で顔が隠れて、表情はうかがえない。
長い沈黙。風が吹き抜ける。遠くで瓦礫が崩れる音が鳴る。
リリアナの背中を見ると、肩が上下していた。
全身で呼吸するほどに緊張しているのだろう。
ファリエルもまた、リリアナの後ろで身構えたまま相手の出方を待った。
すると、風に掻き消えそうなほどの小声が聞こえてきた。
「……勝手にしなさい」
魔女はその赤い目をリリアナに向けることなく、ほうきにまたがって飛び去って行った。
***
帰り道。リリアナは、なにも言えずにいた。
後ろからついてくるファリエルも、ずっと無言だった。
そもそもボナマハト王国をあとにして、魔女の森へと戻ってからもずっと、一度も目を見合わせていない。
胸を締めつける感覚が続いている。顔を上げられない。
小枝や枯葉に覆われた地面を見つめながら、リリアナは子供の頃の記憶を思い出していた。
『あなたの薬を買いたがっている人がいるの。私の恋人の弟だから、なにも心配はいらないわ』
『わかりました、コーデリアさん!』
魔法の作り出す球が、徐々に小さくなっていく。
魔女は構えていた腕を下ろすと、深くうつむいた。
長い黒髪で顔が隠れて、表情はうかがえない。
長い沈黙。風が吹き抜ける。遠くで瓦礫が崩れる音が鳴る。
リリアナの背中を見ると、肩が上下していた。
全身で呼吸するほどに緊張しているのだろう。
ファリエルもまた、リリアナの後ろで身構えたまま相手の出方を待った。
すると、風に掻き消えそうなほどの小声が聞こえてきた。
「……勝手にしなさい」
魔女はその赤い目をリリアナに向けることなく、ほうきにまたがって飛び去って行った。
***
帰り道。リリアナは、なにも言えずにいた。
後ろからついてくるファリエルも、ずっと無言だった。
そもそもボナマハト王国をあとにして、魔女の森へと戻ってからもずっと、一度も目を見合わせていない。
胸を締めつける感覚が続いている。顔を上げられない。
小枝や枯葉に覆われた地面を見つめながら、リリアナは子供の頃の記憶を思い出していた。
『あなたの薬を買いたがっている人がいるの。私の恋人の弟だから、なにも心配はいらないわ』
『わかりました、コーデリアさん!』