傷ついた王子は森の魔女に癒される

24 命の活かし方

 少女の姿をした魔女は、ファリエルのいるベッドから少し離れたところで椅子に腰かけていた。足を組み、頬杖をついている。下ろした足は床に届いていない。
 その赤い目の鋭さに魔獣を思い出してしまい、ファリエルはそっと顔を背けた。

 目だけで辺りを見回す。リリアナの部屋と比べてどの調度品も古風で、魔女の寿命の長さがうかがい知れる。手元に視線を戻すと、淡い色の花柄の布団を被っていることに気づいた。コーデリアのベッドを占拠してしまっているようだ。

 深いため息に、思考がさえぎられる。
 コーデリアは長い黒髪を払うと白けた風な目つきをした。

「あんなに高い崖から落ちて、よくも生きてたものね」

 身体中に走る痛みに、ずいぶんと高いところから落ちたことを実感させられる。きっと彼女に見つけてもらえなければ、そのまま朽ち果てていたかもしれない。
 運がよかったと言えるのか、それとも――ファリエルは、痛みの波をこらえながら率直な疑問を投げかけた。

「あなたは……僕を殺そうとしていなかったか? 助けてくれたことには感謝する。でもなぜ――」
「死んだか確認しに行ったらまだ息があったから、新しく開発した回復薬をあんたで試しただけよ」
「そうか……。ありがとう」

 御礼が口をついて出る。
 でも同時に、もうひとつ別の気持ちが浮かんできた。

(死にそびれてしまったな……)
 
 視線が下がっていく。唇を引きしめて言葉を呑み込む。
 命の恩人を前にして言っていいことではない。

「なによその顔。言いたいことがあるならはっきり言いなさい」

 コーデリアが苛立たしげに声を張りあげる。
 そのヒステリックな声は、かつての婚約者の演技を思い起こさせた。
 心臓がぎゅっと締めつけられる。沈み切った心がさらに深みに堕ちていく。
 半ば投げやりな気持ちで心境を吐き出した。
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