愛なき契約結婚のはずが、クールな御曹司の激しい独占愛に堕とされる
パーティーの後で――side遼河

 七月上旬、梅雨が明けたばかりの少し蒸し暑い夕暮れ時。俺は小雪を連れて、氷室自動車グループの主要な取引先が開催した周年パーティーに参加していた。

 ホテルのプライべートガーデンに彩り豊かな料理がのったテーブルが並び、参加者は立食形式で食事や飲み物を楽しんでいる。

 小雪をこうした場に連れ出すのは初めてなので、会場に入る前の彼女はかなり緊張していた。

 しかし、エレガントな総レースのワンピースドレスに身を包み、夕方から夜の時間帯に映える艶っぽいメイク、小顔を際立たせるすっきりとしたアップヘアで全身をコーディネートした彼女は、夫の俺が言葉を失うほど美しかった。

 顔が明るい印象になったのはメイクのせいもあるが、普段かけている眼鏡を今日はコンタクトに変えたせいもあるのだろう。

 だから、せっかくドレスアップしたのに俯き気味だった彼女に、移動中のタクシーの中で言ったのだ。

『気づいてないかもしれないが、きみは出会った頃よりずっと綺麗になってる。それはもちろん見た目だけの話じゃなく、内面の輝きがそう見せているのだと思う。だから、胸を張って俺の隣にいろ。自慢の妻を直接公の場で紹介できること、俺は純粋に嬉しいんだから』

 そうして手を握ると、彼女も自信を取り戻したらしい。

『ありがとう……遼河さん』

 はにかむように笑った彼女はやはり美しく、握った彼女の手を持ち上げた俺は、愛しさをこめてその指先に軽く口づけした。

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