愛なき契約結婚のはずが、クールな御曹司の激しい独占愛に堕とされる
エピローグ
『今日は、動画をご視聴の皆様に私から紹介したい人がいます。隣にいる、私の妻です』
『氷室エクスプレスをご覧の皆様、初めまして。氷室小雪です』
自宅のリビングに、懐かしい動画が流れている。
氷室エクスプレスに私が出演した、最初で最後の回。さすがに当時ほどの拡散力はもうないけれど、あれから数年が経った今でもじわじわと再生回数は伸びているらしい。
あの頃は若かったなぁ、なんて思ってしまうのは、社長夫人としての生活や周囲からの視線に慣れたせいもあるけれど……。
「まま、ぱぱ」
画面を指さししながら、もう一方の手でミニカーをテーブルに走らせているのは、私たちの息子、雪斗だ。
結婚の翌年に授かった彼はすくすく育ち、もう一歳半を過ぎた。
雪斗は夕食後のくつろぎタイムに氷室エクスプレスを見るのがなぜか好きで、とくに、両親である私たちが揃って出演しているあの回を見せてくれとせがまれる。
「そうだな。ママとパパ、テレビの中にいるな」
ソファで寛いでいた遼河さんが、雪斗の体を抱き上げる。パパと目が合っただけで、雪斗はふっくらしたほっぺをさらに横に広げてにまっと微笑む。