愛なき契約結婚のはずが、クールな御曹司の激しい独占愛に堕とされる
なにも欲しがらない婚約者――side遼河
契約結婚相手の候補である人事部の社員、仲真小雪。
彼女が社長室にやってきたのは、バレンタインから五日後のことだった。
昨日のうちに新町が彼女から連絡を受けていたため、昼休みの社長室に招いて一緒に食事をする手筈になった。
応接テーブルの上には、新町に用意させた料亭の弁当、温かいお茶。それに一度彼女に見せた婚前契約書が置かれている。
「ご提案いただいていた契約結婚のお話、お受けしたいと思っています」
食事を始めるより先に、彼女から口火を切った。まっすぐ俺を見据える眼差しに、深い覚悟の色が見える。
「いいんだな。先日のように勢いで言っているなら後で後悔するかもしれないぞ」
「大丈夫です。近いうちに大切な話があると、父にもすでに宣言してあります」
どうやら、意思は固いようだ。
「わかった。なにか、きみの方から契約の条件に加えたいことはあるか?」
「それなんですが……鬼瓦さんの件は、氷室エナジーでなくお父様の会社の方で問題になっているお話なんですよね? もしもこちらの会社には直接的に関係がないなら、氷室エナジーの中では私たちの結婚を公にしない、という条件を加えることはできますか?」
「上司や同僚に知られたら、仕事がしにくくなるからか?」
彼女が考えそうな理由を口にすると、仲真小雪はあっさり頷いた。