空に預けた恋を誓う〜エリートパイロットは約束の幼馴染を一途に愛しぬく〜
決別の空
早朝、仄香は背後から回された拓翔の腕の重みを感じながら、ゆっくりと意識を浮上させた。
大きな手のひらが背中から身体を包み込み、すぐ側からは安らかな寝息が聞こえてくる。背中に伝わる規則正しい鼓動が心地よいまどろみを誘い、もう一度眠りへと引き戻そうとしてくる。
(このまま……ずっと、こうしてくっついていたいな)
そう願わずにはいられないほど、彼の腕の中は離れがたかった。けれど、現実は朝の光とともにやってくる。
今日は、退職の手続きと最低限の引き継ぎのために、数日ぶりに職場へ戻る初日だ。
正直、気は重い。あの冷ややかな視線に満ちた空間を思い出すだけで、胃のあたりがきゅっと縮こまる。
「………」
逃げ出したい気持ちを飲み込み、仄香はそっと寝返りを打って拓翔と向かい合った。
至近距離にある寝顔は、思わず息を忘れるほどに整っている。
高い鼻筋に、引き締まった輪郭、伏せられたまつげの影さえ端正で、ただ眠っているだけなのに、どこか鋭さを宿した美しさすらあった。
さらに無造作に散った髪やシーツから覗く逞しい鎖骨のラインには、隠しきれない男らしさが溢れていた。
こんなにも素敵な人に、大切に愛されている。
体の奥から熱い幸せがこみ上げ、仄香はたまらず彼をぎゅっと抱きしめた。厚い胸元に頬を寄せ、甘えるようにすり寄る。