空に預けた恋を誓う〜エリートパイロットは約束の幼馴染を一途に愛しぬく〜
希望の約束
「ちょっと、なんなのよこれ!?」
朝の静かな空気を切り裂くように、鋭い怒鳴り声が響いた。
キッチンでフライパンを握っていた仄香は、びくりと肩を震わせた。油が弾けた熱が手に当たり、思わず手を引いたその瞬間、リビングに続くドアが乱暴に押し開けられる。
不機嫌を隠そうともしない姉の里穂が、薄手のシャツを掲げて迫ってきた。
「ねえ、これどういうこと?」
冷たい視線が突き刺さる。仄香は慌ててコンロの火を弱め、火傷した手を押さえながら尋ねた。
「……どうかしたの?」
問い返した途端、里穂の顔がさらに険しく歪んだ。
「はあ?どうかしたの?じゃないんだけど!」
「え……?」
「今日これ着ていこうと思ってたのに、アイロンかかってないじゃない!」
そう言って、シャツを仄香の胸元に押しつけた。
手触りのいいブランド物のシャツには、確かに細かな皺が残っている。
昨夜のうちにかけようと思っていた。けれど洗濯物を畳んでいる途中で母に別の用事を頼まれ、そのまま忘れてしまったのだ。
「ご、ごめんなさい。今すぐやるから…!」
「馬鹿じゃないの?今からアイロンなんかかけてたら仕事に間に合わないじゃない」
里穂は盛大にため息をつき、露骨に顔をしかめた。
「あんたってほんと鈍臭いわよね。見てるとイライラする」
仄香は何も言い返さず、ただ目を伏せた。
「……ごめんなさい」
同じ言葉を繰り返すしかなく、視線は行き場をなくして床の木目を追う。
「里穂の言う通りね。いつまで経っても効率ってものを覚えないんだから」