空に預けた恋を誓う〜エリートパイロットは約束の幼馴染を一途に愛しぬく〜
初恋の奪還 ~side 拓翔~
この瞬間を、どれほど待ち望んできただろう。
十五年の年月は、言葉にすれば短い。だが、たった一つの想いを抱いて生きてきた拓翔にとっては、気の遠くなるような時間だった。
──あの頃の自分は、何もかもが足らない子供だった。
父親は小さな自動車整備会社を経営していた。腕は確かだったが、あまりにお人好しで世渡りが下手だった。母を病気で亡くしてからは、団地の狭い一室で男二人、寄り添うように暮らしてきた。
特別に貧しいわけではなかったが、不器用な父が一人で仕事と家事をこなすには限界があった。拓翔が着るシャツには父がうっかりして洗濯の際に入り混じった色移りの跡や、整えきれずに残った細かいシワがいつも刻まれていた。
加えて当時の拓翔は体つきも細く小柄で、同年代の中に混じればどうしても貧相に見えてしまっていた。
そんな身なりを見た周囲の人間は、いつも複雑な視線を向けてきた。
「母親のいない貧乏家庭」という露骨な哀れみと、自分たちより下だと値踏みするような、わずかな蔑み。そんな言葉なき視線を、拓翔は子供ながらに敏感に感じ取っていた。
(俺は惨めでもないし、なにも可哀想なんかじゃない)
そんな苛立ちを抱えていた日々を鮮やかな色彩で塗り替えてくれたのが、仄香だった。