10年越しの溺愛——御曹司は私を逃さない
第5話:独占欲、と言われましても
新規契約の案件が正式に回ってきたのは、月初の業務がようやく一段落ついた頃だった。
「今回の新規案件、経理も初期段階から入ってほしい」
経理が早い段階から関わる案件は、大抵、金額規模が大きいか、条件調整が複雑なものだ。
「今回の相手先なんだけどね」
部長は資料をめくりながら言う。
「セントリック・グローバルコンサルティング」
その社名が出た瞬間、まさか、という言葉が頭をよぎる。
そんなはずない、と打ち消そうとするのに、心臓だけが先に嫌な速さで跳ねていた。
業界でも知らない人はいない、大手外資系コンサルティングファーム。慎重に扱うべき重要取引先だ。
そして、その会社にいる人物を、私は知っている。
「今回のプロジェクト責任者が、佐藤さん」
その名前が続いた瞬間、呼吸が浅くなる。
まさか。いや、でも。佐藤なんて名前、いっぱいいる。
頭の中で否定と確信が同時にぶつかって、うまく整理できない。