10年越しの溺愛——御曹司は私を逃さない
第2話:振り回されるのは、終わりにしたいの
「それにしても、なんなのあの色気は!?」
テーブルに勢いよくビールが入ったジョッキを置き、紗耶香は顔を真っ赤にして目を見開いている。
金曜日の夜、5月に入ってようやく仕事が少し落ち着き始めたタイミングで、開発部の同期である入江紗耶香と井口に誘われ、久しぶりに同期飲みを開いている私も、少し肩の力が抜けているところだ。
「急になんだよ」
井口が枝豆をつまみながら隣に座る紗耶香を呆れた目で見つめる。
井口も負けず劣らず飲んでいるせいか顔が赤く、鼻先まで熱を帯びている。
「だって~…あのタヌキの後が、まさかあんなイケメン社長だなんて思わないじゃん~!」
「タヌキって、おまっ…」
紗耶香は完全にとろけた声でそう言い、瞳はまるでハート型に変わったかのように輝いている。
その言葉に、正面に座る私も思わず笑いが漏れる。
ビールの泡が喉を刺激するたびに、紗耶香はさらに声を弾ませ、手のひらで顔を包むようにして息をつく。
「タヌキでしょ!タヌキでいいのよ!あんたたち、買収された理由知ってる!?」
紗耶香は手を大きく振りながら、まだ少し赤い顔をさらに紅潮させ、目を輝かせている。