10年越しの溺愛——御曹司は私を逃さない
第3話:嫌じゃないから、困る
「ここが、今日からお前の家」
「……………。」
「毎日残業していて、いつか倒れたりしたら、俺が責任取らなきゃいけないんだよ。言いたいこと分かるよな?」
「……………はい」
病院が終わったあと、本当ならそのまま会社に戻るはずだったのに、気づけばまたここに来てしまった。
そう、あの後私は、結局こっちを選んでしまったのだ。
『俺の秘書になるか、俺と一緒に住むかどっちか選ばせてやる』
あの言葉が、何度も何度も頭の中で繰り返される。
最初に聞いたときは意味が分からなかった。というより、分かりたくなかったのかもしれない。
さすがに冗談だよね、と笑って流そうとしたけれど、黒崎社長は一歩も引かなかった。
その目は本気で、冷たくて、でもどこか逃がさないように絡め取るみたいな光を宿していて、その瞬間、ああこれはもう選ぶしかないんだ、と悟ってしまった。
黒崎社長の秘書になる、それはつまり今まで積み上げてきたものを全部手放すということだ。
経理部主任としての立場も、日々向き合ってきた数字たちも、積み重ねてきた信頼も。