虐げられた末に復讐を終えた王女は、世界で一番幸せな王妃となる

母国の状況 (リシーロ)

 アティール王国の第2王女であるエクリーユ・アベティーラは、異能を発現できない無能のはずだった。
 そんな彼女が細い身体に炎を纏わせ、王族を順番に痛めつけたのだ。家族は全員震え上がり、殺されるかもしれないと怯えた。

(姉様に命を奪われるなんて、冗談じゃないわ……!)

 白百合の君と誉れ高い第3王女、リシーロ・アベティーラは、ちょうどいいところに隣国の国王とともに姿を見せた第4王子――ムガルバイトに助けを求める。

「兄様! エクリーユが……!」

 その時に見せた無能の顔は、傑作だった。
 憎悪の籠もった視線と絶望でいっぱいな表情は、何度目にしても心がスカッとする。

(ふふ。いい気味。わたしの大好きなお兄様を奪おうとしなければ、苦しまなくて済んだのにね?)

 あとはムガルバイトが、彼女を完膚なきまでに叩きのめし――この場を納めれば、それで済むはずだった。
 なのに――その直後、リシーロが想像もしなかった出来事が起きる。

「エクリーユ……!」

 隣国の王であるリドディエが、転移魔法を使って姉を連れ去ったのだ。
 ムガルバイトが伸ばした指先は、彼女に届くことなく虚空を掴む。
< 144 / 246 >

この作品をシェア

pagetop