虐げられた末に復讐を終えた王女は、世界で一番幸せな王妃となる

(リドディエ)

(余計なことを……)

 無理して異能を使い続けたエクリーユは、揺れる馬車の中で目を閉じていた。
 胸元に寄りかかり、苦しそうに眉を顰める彼女が少しでも安らかな眠りを貪れるように、リドディエは額にかかった前髪を退けた。

(あの男が不審な動きをしていないか、もっとしっかりと監視をしておくべきだったか……)

 あのシンボルツリーはただ樹齢が100年を超えているだけだ。
 あれを破壊したところで、保守派国民が悲しむくらいで言うほど影響力はなかった。

(ただの嫌がらせなら、いいんだが……)

 あの男のことだ。
 理由もなく、こんな行動をするわけがない。

(ほかに目的があるとすれば――)

 リドディエには、思い当たる節が一つだけあった。
 それは彼女の妹リシーロ・アベティーラが、植物の異能を操る少女だということだ。

(僕がエクリーユではなく妹のほうを頼るように仕向け、彼女を絶望させようとしたのか……?)

 その作戦は、ムガルバイトが考えたとは信じたくないほどに稚拙だった。
 大樹を元に戻したいから、さして交流のない隣国の姫に頼る――。
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