虐げられた末に復讐を終えた王女は、世界で一番幸せな王妃となる

(ムガルバイト)

(どうしていつも、俺の思い通りにならないんだろう)

 アティール王国の新たな王となった第4王子、ムガルバイト・アベティーラは玉座に座り、心の中で深い溜息を落とす。
 その後、己の膝上に腰かけて胸元に頬を寄せる妹を叱咤した。

「俺に黙って、なんてことをしてくれたんだ」
「なんの話?」
「とぼけないでくれる? わざわざ隣国まで出向き、公衆の面前でエクリーユに喧嘩を売ったまではいい。だけど……。その強さに圧倒され、ノコノコと逃げ帰って来たんだろう?」

 口元だけを綻ばせて事実を口ずさめば、彼女はさっと表情を青ざめさせた。まるで現場で直接目撃していたかのように語ったため、肝が冷えたのだろう。

(この程度で怯えるくらいなら、あの子に手を出さなきゃいいのに……)

 リシーロには、猪突猛進で天真爛漫なところしか取り柄がない。
 己の実力とリスクを天秤にかけて深く思考を繰り返した結果、ただ虐げられ続けることしかできなかった最愛の妹とは何もかもが違う。

(なんでこんな奴が、俺の婚約者を名乗っているんだろう……)

 想定外なことを上げたら、キリがなかった。
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