虐げられた末に復讐を終えた王女は、世界で一番幸せな王妃となる
3・使い魔と乳母
「なぁん」

 エクリーユは聞き覚えのある鳴き声を耳にして、ゆっくりと瞳を開く。
 真っ先に飛び込んできたのは、よく手入れの施された漆黒の毛並み。
 そして、ピンと天井に向けて尖った2つの耳に――自分と同じ、真紅の瞳だった。

「あなた……。王族の手記を見つけてくださった、黒猫さん……?」

「んにゃあ!」

 獣はこちらの問いかけに同意を示すように何度も頷くと、嬉しそうに胸元へ頬擦りした。

「どうして、ここに……?」

 懐いてくれるのはありがたいが、ここは生まれ故郷ではなく隣国だ。
 猫との再会を素直に喜べずに戸惑うが、どうやら動物も同じ気持ちであるらしい。

『どうして、撫でてくれないの?』

 不思議そうに首を傾げる小動物の姿を目にした少女は、恐る恐る黒猫の四肢に触れた。

「ふかふか……」

「んなぁ~」

 気持ちよさそうに喉を鳴らす声を聞きながら、口元を綻ばせてはたと気づく。

(お兄様と笑い合った時以来ね……)

 自分は長い間、笑えていなかったのだと。
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