余所者-よそもの-
24話:境界線
「おはようございます」
「鍵」
「ごゆっくり」
シドは私を担いだまま古びた建物に入ると、控えた老人から鍵を受け取った。
必要最低限のやり取りは慣れたもの。
エレベーターに乗ってそこに入るまで、一切無駄のない動作で行きついた。
ドサ、と私が放たれたのは、ベッドの上だった。
ずっと逆さまになってシドの背中を向いていた私の視界は途端、シミの目立った天井を映し出す。
……ここは、ホテルだ。
照明は薄く、簡易的な部屋。
ビジネスホテルだと思う。
キン、と金属が弾かれた音と共に、起き上がる。
シドはジッポライターで煙草に火をつけ吸い込み、白い煙を漂わせる。
ポケットの中身をテーブルに置くと、同じベッドの端に腰かけた。
「で?」
二人きり。
密室。
音のない部屋。
私とシドの些細な動作音だけがこの部屋を支配している。
私は震える手にぎゅっと力を込めた。
「なんであそこに居た?」
低い声は静かに私を問い詰めた。