余所者-よそもの-
Epilogue
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「……ハッピーバースデートゥーユー」
――パン!とシャンパンの弾ける音に、キャーと子供がはしゃぐみたいな声。
自分の誕生日なのに歌を歌うのは本人だけ。
虚しくないのだろうか、と思うけれど、俺に「歌え」と言われても困るので黙っていた。
「20歳だよ!」
「そうだな」
「大人だよ!」
「おめでとう」
「もっと楽しそうに!」
それだけお前が楽しんでいれば十分だ。
呆れた心の声は言葉にせずに、用意していたプレゼントを無言で差し出した。
「なにこれ?」
「プレゼント」
「うそ、ホント?」
「誕生日だろ」
そうしてちらりとこちらの顔色を窺ってから、包を慎重に開く小さな手。
「うそ……」
「なんだよ」
「ほんと?これ私に?」
「お前以外にこんなモン、誰に渡すんだよ」
信じられない、といったように声を震わせるコイツがじれったい。
いつまでも眺めていそうなケースから、銀の指輪を取り出して、細い指にスッと通した。
「………」
「なんだよ、なんか言えよ」
「う……嬉しくって」
「……だからって泣くなよ」
桜色の唇を噛みしめて、丸っこい頬にぽろぽろと澄んだ涙を零す女。
「タカ……ありがとう。わたし、幸せだよ……」
これが俺の記憶にある、カナの最後の涙。
――いつから、アイツは泣かなくなっただろう。