愛が壊れた時、策略御曹司の罠に堕ちていく
卒業制作にあたって
卒業制作は、蓮(はす)一文字にした。
蓮の花を描いた作品の構想までできたのは、蓮のおかげというか、これ以外考えられなくなってしまったからだ。
上手く言いくるめられて蓮のいない間でも、彼の部屋で過ごす時間が増えて、彼の帰りを待つことが当たり前になって、バイト帰りも自然と足がここに向いていて、頭の中は蓮でいっぱいになってるせいで、他の構想を考えてもここに戻ってきてしまう。
好きな人の名前を卒業制作の記念に残せるのは、素敵な案だと思う。
そう決意し、どのように構成しようかと悩んでいる。
どうせなら、蓮のようにカッコよくなればいいと、さまざまな書の表現と蓮(はす)の絵を思案している最中だ。
そこへ、帰宅した蓮が背後から抱きしめてくる。
「ただいま」
「おかえりなさい」
書いた紙を取り、「上手いな」と褒めてくれる。
「一応ね」と照れ隠しをして誤魔化す。
「筆もいろいろあるんだな」
「うん」
毛の硬さや、太さ、穂の長さとさまざまな種類が用途によって分けられる。
「これは?」
蓮が手に持ったのは、柔毛筆という穂の長めの筆だった。
手のひらで毛先の柔らかさを楽しんでいた蓮が、突然、私のうなじを筆の毛先で撫でだした。
くすぐったさに「やんっ」と肩をすくませただけだった。