愛しい俺様パイロットと、今日もいちゃいちゃ舌戦中
愛しい人の涙――side知隼
木曜の夜に体調を崩していた綺美だが、翌日には顔色も食欲も回復してフライトに出かけていった。
連休だった俺は彼女を見送った後、手早く家事を済ませて勉強の時間に充てる。
パイロットの資格は一度取れば終わりというものではなく、定期的に審査を受ける。常に自分の知識と技術をアップデートしていかなければ、乗務を続けることができないのだ。
また、現在副操縦士である俺だが目指しているのは当然フライトの最高責任者である機長のポジション。キャリアアップのためにも、日々の勉強は欠かせない。
常にモチベーションを維持するのは口で言うほど簡単ではないが、俺にとって大きな力になっているのは、他でもない綺美の存在だった。
彼女の存在を認識し始めたのは、若手の頃に参加したリカレントトレーニングでのこと。
当時はまだ新人CAだった彼女は、火災を想定して行われたその訓練で明らかにパニックに陥り、自分の取るべき行動もその優先順位もわからずに右往左往していた。
CAがあの状態では、客はもっとパニックになって避難が難航するのは目に見えている。
怪我人や、もっと言えば死者が出る可能性だってある。
同じクルーでも、俺たちパイロットはコックピットから出られない。客室の秩序と乗客の安全を直接的に守れるのは、彼女たちだけなのだ。