愛しい俺様パイロットと、今日もいちゃいちゃ舌戦中
エピローグ


 毎年恒例のリカレントトレーニングで、今年も大勢のCAが戸惑いながらも懸命に緊急脱出訓練に臨んでいる。

「頭を下げて! ヘッドダウン!」
「落ち着いてください! ステイカーム!」

 率先して声を上げているのは、やはり経験のあるCAだ。

 若いCAは訓練だと頭で考えてしまっているせいか、大声を出すことに迷いと恥ずかしさを覚えているよう。

 ここに知隼さんがいたなら厳しく指導したに違いないが、その役割は今や私の仕事。

 入社八年目になった私はキャリアアップの一環でトレーニングセンターに配属されていた。

 一時的に乗務を離れ、訓練を受けに来たCAたちを指導する立場になったのだ。

 経験を重ねたお陰か、昔は見えていなかったものが今ならよく見える。不安でたまらない気持ちもわかるけれど、もっと不安なのは乗客だと、気づかなければならない。

 私は通路の中央に立ち、誰より大きな声で訓練用の客室全体に伝える。

「語尾を伸ばさない! 乗客が聞き取りづらいです!」
「そのドアは使用不可です! 状況をよく見て!」

 指示を飛ばした後は、CA個人個人の行動を記録し、評価していく。

 全員を合格させたいのが人情だけれど、そうもいかないのがこの仕事のつらいところ。

 合格ラインに満たないCAにはきっちり再訓練の判を押すとともに、心の中で『頑張れ!』とエールを送った。

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