今日はここまで、ここから一緒に〜君と作る未来〜
第一章 沈みゆく王国
春の雨が上がったばかりの朝だった。
ガラス張りの高層ビルに、
まだ濡れた街路樹と雲間からの陽が映り込んでいる。
日本有数のシステムキッチンメーカー『暁《あかつき》キッチン』の本社ビル。
わたしは、その自動ドアの前で一度深呼吸をした。
「春日《かすが》小春《こはる》、二十八歳。今日から、ここが戦場」
自分に言い聞かせるようにつぶやき、
スーツの裾を軽く整える。
まだ新品に近いベージュのパンプス。シンプルな紺のジャケット。
大きめの鞄には、使い慣れたノートパソコンと、
びっしり書き込まれたメモ帳。
ガラスに映る自分の顔は、
思っていたより少し大人びて見えた。