君の隣は、呼吸ができる
第4話 呼吸はできているはずなのに
ほとんど眠れないまま、朝を迎えてしまった。
昨夜の母の言葉が、ずっと頭の中で繰り返されている。
一泊していた姉と姪っ子が帰ることになり、私は家の前まで見送りに出ていた。
「ふぁ……」
あくびを噛み殺した拍子に、目尻にうっすら涙が滲む。
色んなことがあったはずなのに。
今は、真樹の引っ越しのことばかり考えてしまう。
(何で教えてくれないんだろ……)
彼の口からじゃなくて、自分の母から知ったことが引っかかる。
門の前に落ちる木陰をぼんやりと見つめる。
夏の日差しに揺れる葉の影が、足元でゆらゆらと形を変えていた。
「ねぇね!」
首元に回された姪っ子の腕に、ハッと我に返る。
父が車を回してきたので、抱っこしたままチャイルドシートへ乗せた。
「あ、真樹くんだ〜!」
姉の声に、ビクッと肩が跳ねる。
思わず車に頭をぶつけそうになった。
振り返ると、真樹が家から出てきたところらしく、門の前に立っていた。
シワひとつない紺色のTシャツ姿。
通勤スタイルじゃなくてラフな服装だけれど、急に大人っぽく見えてきた。
見慣れているはずなのに。戸惑ってしまう。
「おはようございます。お久しぶりです」
真樹は、姉に柔らかく笑いかける。
両親にも丁寧に挨拶をしてから、最後に私を見た。
「おはよ」
真樹が少し困ったような笑顔で、軽く手を上げた。
「……お、おはよぉ」
なんとなく気まずい。
私だけかもしれないけれど。空気がおかしい。
張り付けたような笑顔で挨拶を返してしまった。
「……えっと、フットサルの練習ですかね?」
(ちょ、何で敬語になるの)
なんとかそれだけ聞くと、真樹は短く首を振った。
「いや」
それ以上、言葉が続かなくて会話が途切れる。
さっきから、なんとなく目が合わない。
じゃあ、『引っ越しの準備?』と聞きかけて。
「……」
私は口を閉じた。
なんで。
こっちから、この話をしなきゃいけないんだろう。
胸の奥がモヤモヤするのを感じた。
昨夜の母の言葉が、ずっと頭の中で繰り返されている。
一泊していた姉と姪っ子が帰ることになり、私は家の前まで見送りに出ていた。
「ふぁ……」
あくびを噛み殺した拍子に、目尻にうっすら涙が滲む。
色んなことがあったはずなのに。
今は、真樹の引っ越しのことばかり考えてしまう。
(何で教えてくれないんだろ……)
彼の口からじゃなくて、自分の母から知ったことが引っかかる。
門の前に落ちる木陰をぼんやりと見つめる。
夏の日差しに揺れる葉の影が、足元でゆらゆらと形を変えていた。
「ねぇね!」
首元に回された姪っ子の腕に、ハッと我に返る。
父が車を回してきたので、抱っこしたままチャイルドシートへ乗せた。
「あ、真樹くんだ〜!」
姉の声に、ビクッと肩が跳ねる。
思わず車に頭をぶつけそうになった。
振り返ると、真樹が家から出てきたところらしく、門の前に立っていた。
シワひとつない紺色のTシャツ姿。
通勤スタイルじゃなくてラフな服装だけれど、急に大人っぽく見えてきた。
見慣れているはずなのに。戸惑ってしまう。
「おはようございます。お久しぶりです」
真樹は、姉に柔らかく笑いかける。
両親にも丁寧に挨拶をしてから、最後に私を見た。
「おはよ」
真樹が少し困ったような笑顔で、軽く手を上げた。
「……お、おはよぉ」
なんとなく気まずい。
私だけかもしれないけれど。空気がおかしい。
張り付けたような笑顔で挨拶を返してしまった。
「……えっと、フットサルの練習ですかね?」
(ちょ、何で敬語になるの)
なんとかそれだけ聞くと、真樹は短く首を振った。
「いや」
それ以上、言葉が続かなくて会話が途切れる。
さっきから、なんとなく目が合わない。
じゃあ、『引っ越しの準備?』と聞きかけて。
「……」
私は口を閉じた。
なんで。
こっちから、この話をしなきゃいけないんだろう。
胸の奥がモヤモヤするのを感じた。