君の隣は、呼吸ができる

第8話 初めてのヒールの靴

――今日は、ご機嫌な金曜日。
鼻歌まじりに、玄関の鏡の前でくるりと回る。

昨日、仕事を大急ぎで終わらせて寄り道したショッピングモール。
そこで、奇跡みたいにサイズの合うパンプスを買った。
私には、大冒険のヒールの靴。

それに合わせて、花柄のシフォンワンピースも。
店員さんに小柄女子の着こなしを教わって、新商品だと勧められたから、思い切って買ってしまった。

お財布の中がだいぶ寂しくなった。
でもこれは、必要投資なので後悔はしていない。


毛先をゆるく巻いた髪を触る。

「大人の女の人っぽくなれたでしょうか!?」

テーマパークのお姫様を意識した笑みを浮かべてみた。

少し巻き方が雑なところもあるけれど。
初めての挑戦にしては、いい感じにできたと思う。

(真樹、驚くかな?)

いつもの彼だったら、きっと笑いながら褒めてくれる気がする。


鏡の前で、角度を変えながら全身チェックをしていると、鍵置きの横に置いたキーホルダーに目がとまる。

それは、葉っぱを抱えたハムスターのキーホルダー。

前に真樹にもあげたのと同じもの。
結局、まだ使ってなくてそのまま置いてある。

せっかくだからカバンに付けようと思ったものの、今日の服装とは合わなそうだった。

(使う時がちゃんと来るから待っててね!)

葉っぱの部分をチョンと触ると家を出た。
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