君の隣は、呼吸ができる

第15話 隣で呼吸をする(最終話)

ふっと真樹の腕の力が緩み、私の肩をやさしく掴んで少しだけ距離を作る。

「若葉」

低い声で囁かれて、視線が重なった。
真樹の顔がゆっくり近付いて、唇が触れそうになる。

(え……っ)

真樹がしようとしていることが分かったけれど、心の準備ができていない。

私は思わずギュッと目を閉じて、彼のシャツを握りしめた。

「……っ、……っ」

――でも。
待っても何もなくて。

「……分かりやすいって」

耳元で漏れた、困ったような笑い声。

「うう……っ」

(だって……心臓……爆発するから……っ)

真っ赤になった顔を隠したくて、目を閉じたままうつむく。


真樹の気配がさらに近くなったのを感じた。
そして、柔らかい感触が、私のおでこに軽く触れた。

「……!」

目を開くと、真樹の顔がやさしい目で私を見つめていた。

「今は、これで我慢しておく」

柔らかく笑いながら私の頬を撫でると、顔が離れていった。


ほっとして笑みを返したけど、胸の奥がちりっと疼く。

あんなに身構えていたのに。
唇じゃなかったことが、少しだけ惜しく思えてしまう。

でも、もう一度来てほしいなんて、恥ずかしくて口に出せない。

(……我慢、しなくていいのに)

触れられたところに残る熱を感じながら、欲張りな本音を心の中で漏らした。
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