王女エメリーネに悪女は似合わない~軍人公爵の盲愛に囚われて
31.
 アルマスの執務室から戻ってきたエメリーネは、帰り際にコンストから目録を手渡された。それは母妃が管理していた宝飾類が書かれているものである。
「大女優エメリーネ様、お疲れですね」
 席に着いたエメリーネに向かって、エリナがクスクスと笑いながら声をかけてくる。
「変に気を遣うから、疲れるわ……」
 知らぬうちに身体にも力が入っていたのかもしれない。エメリーネは首を左右に倒し、肩をぐるりとまわす。
 だが、それだけ身体を硬くした効果はあったようだ。アルマスは、エメリーネとお茶を飲んでいる間は、始終、黒っぽい黄色のオーラを放っていた。つまり、機嫌がよかった。
「エメリーネ様のお役に立てず、申し訳ありません」
 エリナが重々しく謝罪の言葉を口にするのは珍しい。アルマスの部屋へ向かったときにはシーラを連れていったので、エリナにはこの部屋の留守を預かってもらった。それを気にしているのだろう。
「いいえ、あなたは十分、役に立っているわ。だから、そんなリナにお願いがあるの」
「なんでしょう?」
 役に立っていると言われて満面の笑みを浮かべるエリナは、身を乗り出してきた。
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