王女エメリーネに悪女は似合わない~軍人公爵の盲愛に囚われて
32.
 父王の元を訪れたその日、エメリーネはシーラと共に聖堂へと向かった。まだ父を外にまで連れ出すのは難しいらしい。だが、これから聖堂へ向かう日は、声をかけてみようと思っていた。
 聖堂の奥へと足を勧めたエメリーネだが、今日はテレジア神の石像の前には誰もいない。胸の奥がズキッと痛むと同時に、それが寂しさからくるものだと自覚する。
(今日は、来ていないのね……)
 ここに来ればオディロンに会えるかもしれないと期待していたのは事実。そしてその期待は見事に砕かれた。
 シーラと並んで、テレジア神に祈りを捧げた後、近況を報告し教えを乞うために告解室へと向かう。
「少しずつ、新しい環境にも慣れているようですね」
 聞き慣れたテレジア神の声は、エメリーネにとって心に安穏を与えるものでもある。
「はい。まだできることは少ないのですが……ただ、慈善活動の一つとして、孤児院への慰問を考えています」
「孤児とはいえ、彼らもまた、テレジア神によって命を与えられた者です。然るべき教育を受ければ、この国を豊かにしてくれる人材となり得るでしょう」
 ここで教育を与えれば優秀な人材に成長するだろうが、彼らを突き放せば犯罪に手を染める者もいるかもしれない。
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