王女エメリーネに悪女は似合わない~軍人公爵の盲愛に囚われて
33.
「お父様、聞いてください。わたくし、先日、孤児院に行きましたの。そこで子どもたちに絵本を読んであげたのですが……子どもたちってかわいいのですね」
 父王の執務室でエメリーネが顔を輝かせて国王に話しかけると、国王もまた「そうか、それはよかったな」と笑顔で返す。
 エメリーネが国王の居室を訪れ、共にお茶を飲むようになってからというもの、次第に父は動けるようになっていた。今では執務室にも足を伸ばし、簡単な仕事から再開しているらしい。
 もちろん国王の執務室にはアルマスの姿もあったが、エメリーネが訪れると父はアルマスに下がるよう指示を出す。しかしエメリーネの侍女や補佐官に対してあれこれ口を出す素振りはなかった。
 だからシーラとエリナは部屋の隅に立っていて、エメリーネが呼べばすぐに駆けつけてくれる。といっても、ここでは父王とお茶を飲むくらいなので、二人の出番はこれといってない。ただ、この場ではエメリーネがお茶を淹れるため、二人はヒヤヒヤした様子で見守っているくらい。
「お父様。こちらは、カモミールティーです」
 これはエリナがすすめてくれたお茶だ。だが、エメリーネもよく飲んでいたお茶でもあった。母妃を失い、冷えてしまった心を、あたためてくれたお茶だ。
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