再会した冷徹上司は、私にだけ過保護です

番外編 洞察力SS、恋愛理解力E

「……」

 朝のそれがし編集部。
 冬馬先輩が眉間にシワを寄せて、難しい顔をしている。

「なに? 氷室のやつ、めちゃくちゃ機嫌悪そうじゃない」

「怖い……企画書出しづらい……」

 犀川さんと小泉さんがひそひそと話をしていた。
 小泉さんは以前、「自分で企画書を出せ」と注意されているので、余計プレッシャーなんだろうな。

「ああ、あれ機嫌悪いわけじゃなくて、原稿3本読んだ後の顔ですね」

「え?」

 私の言葉に、2人は目を丸くしている。

「わかるの?」

「わかりますよ」

 私は席を立ち、給湯室からコーヒーを持ってきた。

「先輩、糖分も欲しい顔してますね。チョコ置いときます」

「……」

 冬馬先輩はゆっくりと視線を上げて、私を見る。

「……なぜ分かった」

「当たってる!?」

 犀川さんと小泉さん、あとはどこからか見ていた田島さんも、戻ってきた私に小さく拍手していた。

「小日向ちゃん、すごいね~」

「待って、エスパー??」

「え、先輩結構わかりやすいですよ」

「なんでそれを恋愛方面で発揮できないの??」

 3人は珍獣を見るような顔で私を見ていて、なんだか照れてしまう。

「え、じゃあさ、氷室ちゃんの写真見てどんな感情なのか当ててみてよ」

「田島、なんでアンタ氷室の写真なんか撮ってるの……?」

 犀川さんの疑問を無視して、田島さんが自分のスマホを操作した。

「この顔は?」

「あ、すごく不機嫌そう。多分日暮先生関連ですよね」

「うん、また脱走されたときのやつ」

「氷室の無表情なんてだいたい機嫌悪そうじゃない……?」

「そんなことないですよ。この写真なんて、褒められて照れてる顔じゃないですか」

「お、当たってる。編集長に褒められたときのやつ」

「どこを見て判断したの? 全部同じ表情じゃない」

「え、違いますよ。ちゃんと見てください」

「見てわかんないから言ってるんだけど」

 そんな感じで4人でわいわいしていたら、それは冬馬先輩の目にも入るわけで……。

「なにをしている。仕事場で騒ぐな」

「あ、すみません、先輩!」

「氷室ちゃん……」

「なんだ、田島」

「小日向ちゃんって、よく見てんだね……」

「……そうか」

「あ、先輩、なんかちょっと嬉しそうですね」

「……気のせいだ」

 そうなのかな。
 先輩、ほんのり耳が赤い気がするんだけど。
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