あの日、青い海に君を置いてきた~「大丈夫」の先で君を失った。だから私は、今日も止める~

7 筋トレ


練習が終わると、私たち一年女子三人は、決まって体育館脇の自動販売機へ向かった。

いや、正確には。
美咲は普通に歩いていた。
麗子は少し疲れていた。
そして私は、よたよたとついていった。

美咲はいつものように余裕の笑顔で、自販機にコインを入れる。

「美咲……わたしのも買って……」

「何飲む?」

「なんでもいい……冷たいやつ……」

私はベンチに座り込んだ。

ドリンクを飲む手すら重い。

麗子も隣に座ると、さっそく美咲と作戦会議を始めた。

「ねえ。どうしたら、あの練習を少しでも楽に乗り越えられると思う?」

「声出すと疲れるよね」

「そうなの。だから、自分が数えるとき以外は口パクでいこう」

「なるほど」

「あと、腕立て伏せ」

麗子が声をひそめた。

「おなかを地面につけて、やってるように見せる」

「それ、ばれない?」

「ばれないようにやるの」

真剣だった。

私はジュースを飲みながら、力なくうなずいた。

すると麗子が言った。

「ねえ」

「なに?」

「航平先輩の足が折れたら、練習休みになるかな」

美咲は即答した。

「ならないと思う」

「なんで?」

「足折れてても、椅子に座って指示出しそう」

「……ありえる」

私たちは沈黙した。

恐ろしい想像だった。

「じゃあ、どうしたら練習休みになるの?」

三人で本気で考えた。

そして私は、ひらめいた。

「航平先輩がレポート出し忘れて、教授に呼び出される」

麗子がぱっと顔を上げる。

「それだ!」

美咲もうなずいた。

「それなら練習来られない」

三人で手を合わせた。

「航平先輩が、教授に呼び出されますように」

「レポートを出し忘れていますように」

「できれば月水金に」

そこまで祈った、そのときだった。
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